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【鬼滅の刃】あなたに逢いに 

第21章 秋祭りを歩く


【実弥side】


「何ででしょうね。ちゃんと連れがいるとは言ったんですけど、聞いてもらえなくて。私がお腹空いてそうだったんですかね?よっぽどお蕎麦食べたかったんですね」

屈託なく笑って話す姿に、スッと毒気を抜かれる。あの男達にへの怒りは増すが、驚く位に俺を纏うドス黒い感情はなくなっていく。
そうすると、ノブに対して怒るのが馬鹿らしくなってきた。

「…ノブ、お前さァ、谷川の蕎麦屋がどんな所か知らないんだろォ」

「はい?蕎麦屋は蕎麦屋ですよね?もしかして、実は蕎麦じゃなくてうどんが出てくるとか?」

何でそんな考えに至るんだよッ!
記憶もなかったし、常識外れな事ばかりしてるから、まぁ、この回答でもあり得ない事はないのかとも、思う。俺も随分とノブのおかしさにも馴れたもんだ。

ハァっと一つ、大きく溜め息をつき、額に一髪軽く指で叩く。

「馬鹿かァッ!本当に知らないんだな。そこは蕎麦屋は蕎麦屋でも、裏で出会い茶屋みたいな事やってる店だァ」

「はいッ?」

目を丸くしているから、どんな場所かは理解したのだろう。

「聞いたことあるかァ?大方ふらふらしてるお前をそこに連れ込む算段だったんだろ」

「はぁ~。言われてみれば、何となく記憶の片隅にありますね。じゃ私、連れ込まれてヤられるとこだったんですね~。あ、でも、斉藤さんと蕎麦屋に行ったんですけど、そんな感じなかったですよ?全ての蕎麦屋がしてる訳ではないんですよね?」

「ア゛ァッ!斉藤と蕎麦屋に行っただとォ?」

連れ込まれてヤられるとは自分で言っているのに、何なんだ、この他人事のような話し方は。
それに斉藤と蕎麦屋に行ったなんて、聞いてねぇ!

「あれ?言ってませんでしたっけ?悲鳴嶼さんの所に行った帰りに連れて行って貰いましたよ。お腹空いたんで」

気の抜けた顔でヘラリと笑う。

「…お前、もう少し、自分の身を考えろォ」

暖簾に腕押しのようなやり取りに、沸騰しかけた感情が、萎んでいく。
頭を抱えつつ、その一言だけ呟いたが、結局その返答にも頭を抱えることになるとは思わなかった。


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