第20章 秋祭りのお手伝い
【実弥さんside】
「あっ。実弥さん。聞いてください。斉藤さんが怒るんですよ」
俺に気づいたノブが、駆け寄ってくる。
その後ろから斉藤もこっちに向かってくる。
「気になさらないで下さい、不死川様。おい、ノブ!何でもかんでも不死川様に頼りすぎるんじゃない!」
「だって、実弥さんしか頼る人いないんですもん。それより、斉藤さんに華子さんとの関係を聞いただけなんですよ。なのに怒られるだなんて。どんだけですか、斉藤さん」
俺しか頼る人がいない、か。
さっき同じような事を聞いたな。
苦笑しながら、言い出した張本人達を見れば、俺の事なとそっちのけで、結局二人で言い合っている。
「煩いッ!ほっとけや」
「痛いッ!もう、華子さん、斉藤さんって、本当はこんな人なんですよ。一緒になったら、豹変するかもしれないので、今一度よぉーく考えてくださいね…って、痛い!痛いですって」
「お前は、俺達をどうしたいんだッ!」
「えっ?そりゃ早く幸せになって貰いたいだけですよ」
「からかってるだけだろ」
「からかってませんよ。いつどうなるか、分からないじゃないですか。死ぬことだってあるし、私みたいに記憶をなくしちゃって、どこの誰だか分からなくなることもありますし。明日どうなるか、誰にも分からないんですよ。だから、早く幸せになって欲しいなぁって思うんです」
「…ノブ」
「だから、私がここにいるうちに、いい報せを聞かせてくださいよ、斉藤さん」
「なんだよ、それは」
「誰も明日の事は分からないですからね。今を一生懸命に生きないと。後悔しても遅いですからね。それに…」
そう言うと、斉藤に近づき腕を掴んで、ノブは顔を近づけた。少しだけ意地の悪い顔で笑いながらだ。
「ひゃあ!」
気がつけば、ノブの腕を掴み、斉藤から引き離していた。ドロリとした何だか分からない感情が俺の中を駆け巡る。