第20章 秋祭りのお手伝い
ぼんやりとそんな事を考えていたが、おじさんの声で、現実に引き戻された。
「それよりも、ノブ、お前は斉藤だけじゃなくても夫婦漫才やるんだな!」
ニヤリと笑うおじさんは、さっきまでの温かさはどこへ行ったと疑いたくなる程、嫌みったらしい。
「失礼な!漫才なんてしてませんよ!」
「お前、阿呆だしなァ」
真面目に答えたのに、実弥さんまでだめ押しする。
「実弥さんまで!そんなことないですって。ちょっと変なこと言ったりしますし、独り言は多いし、まぁ大雑把ですけど。阿呆ではないです!」
途中、ボソボソと声が小さくなったものの、きちんと否定した。にも関わらず、実弥さんはニヤリと意地悪く言う。
「その発言が認めてるって言うんだァ」
「認めてません!そんな事ばっかり言うなら、今度おはぎ買ってきませんよ」
言われっぱなしも悔しいので、せめてもの反抗を示す。だけど、相手が一枚上手だった。
「自分で買いに行くさ。それより仕事放棄するなら追い出すぞォ。いいのかァ」
「あぅっ!ダメです!ちゃんと買ってきます!だから追い出さないで下さい。行く所ないです」
せめてもの反抗もすぐに撤回し、結局居候を続けさせて貰う事を懇願する形になる。思ってたのと違う。少しは取り乱した姿も見たいのに。結局実弥さんには敵わない。
そんな私達のやり取りを側で何も言わずに見守っていたおじさんが、口を開く。
「本当にお前ら、面白いなぁ。どう見ても漫才だよ。まあ、ノブ、追い出されたら、うちに来ていいからな」
「ありがとうございます!おじさん!でも多分お世話になることは、ないと、信じたい…。いや、その前に漫才はしてないですから」
「そうかァ?どう見ても漫才だよ。少々のことじゃ追い出されんだろうがな」
「ノブですから、少々の事では済まないことをやりそうですけどね」
「そりゃ言えてるな!」
二人ともニヤリと笑った顔はカッコいいのだが、変な所で意見を合わせないで欲しい。
「もう~二人で意気投合しないで下さい~!」
「ほら、お前ら、祭りを回るんだろ?行かなくていいのか?」
「そうでした!おじさん、今日はお世話になりました。あ、実弥さん。斉藤さんと華子さんに挨拶してきますね」
「ああ」
おじさんと実弥さんを残し、駆け足で二人がいる外へ出ていった。