第20章 秋祭りのお手伝い
「それよりも、おじさん。今日はお世話になりました。あまり役に立てないのに、途中で抜けてしまってすみません」
言い終わると共に一度深く頭を下げた。
おじさんはそんな私の肩を軽く叩きながら、話し始める。
「ほら、頭上げろ。まぁ、正直言うとな、想像してたよりしっかり働いてもらってたから、驚いたよ。お前、前にも売り子してたんじゃないか?記憶がないって言ってたが、それにしては手際が良かったよ。もう少し手伝わないといけんかと思ってたが、ほとんど店番を任せられたしな。その分華子がこっちを手伝えたから、作る方も早く終わったし、本当に助かった。ありがとな」
想像もしていなかったおじさんの言葉に、嬉しさが汲み上げると同時に、本当に役に立てたのかという疑問が浮かぶ。お世辞にしても、多大な褒め言葉に理解が追い付かない。
「本当ですか?店番しかできなくて、本当に申し訳なくて。他にもお手伝いできたら良かったんですけど、なかなか分からなくて」
「ははっ。店番を任せられるだけでも大したもんだよ。客とのやり取りもちゃんとやってたし。本当に助かったよ。ありがとうよ」
豪快に笑いながら、頭をガシッと撫でられた。
その後、おじさんは戸棚に向かい、何かを取り出した。
「それと、これ。少ないが、今日の手伝いの礼だ」
その目の前に差し出された紙袋と、封筒が「お礼」だと言われ、頭がパニックになる。
「えっ?いやいやいやいや、貰えませんよ。お手伝いなんですから」
私はただの手伝いだ。間違いなく封筒の中身はお金だろう。それを貰う訳にはいかない。頭の中は、ダメだダメだと、それだけがぐるぐると回る。
「何言ってるんだ。手伝って貰ってこっちは助かったんだ。ノブがきちんと働いた対価だ。そりゃ少ないが、貰ってくれ」
ぐいぐいと、紙袋を掴んだ手が目の前に迫ってくる。
「えー。多い少ないの問題じゃないです。いや、無理です。ちょっと待ってください。私、無理です。実弥さ~ん。実弥さん。どうしたらいいですかね、私」
お金なんて貰えない、という事だけが、頭の中を占めていた。どうすればいいのかも考えられず、気づけば実弥さんに助けを求めていた。