第20章 秋祭りのお手伝い
流石親子、言うことが同じだ。そんな共通点にほっこりしていると、斉藤さんがいつの間に移動し、耳打ちをしてきた。
「おい、ノブ。もしかして、不死川様が来てるのか?」
「はい。今外で待って貰ってますよ」
「親父さん、すみません。俺、ちょっと挨拶してきます」
斉藤さんは返事が聞こえる前から、体はもう外へ向いていた。
そんな状態の斉藤さんに笑いながら、早く行けと言えば、その返事を聞くなり、焦ったように店の外へ出ていった。
遠くで不死川様、と言う声が聞こえた。二人の様子が想像でき、自然に顔が緩んでしまう。
「それにしても、血相変えて出てったな。そんなに怖いのか、ノブが居候させて貰ってる奴は。確か義雄の上司とか言ってたな」
おじさんは笑っているが、少しだけ目が怖い。
不死川実弥という人物を探っているのかもしれない。
斉藤さんはどの程度おじさん達に話しているのだろう。少しだけ疑問に思いながらも、当たり障りのない程度に答える。
「そうですね。斉藤さんにとっては、上司ですかね、たぶん。階級的には実弥さんの方が上でしょうし。そういうのもあるんでしょうけど、まあ実際、見た目は怖いと思いますよ。人相は良くないかと。それに口調も荒いですし」
「そんな奴なのに、ノブは一緒に住んでて大丈夫なのか?」
笑顔が消え、探るような目つきはそのままだ。隠すことすらしていない。私の身の安全も考えてくれていると思いたい。
「はい。見た目も口調も怖いですけど、とっても優しい方ですよ。口調がぶっきらぼうなのは、照れ隠しの一面もありますし」
そう答えれば、一気におじさんの目元が緩む。
「ははっ。ノブがそう言うなら、そうなんだろうな。だけど、義雄との違いに、俄然気になるな、そいつ。ちょっと後で見てやろう」
ニヤリと笑うおじさんは、先程までとは表情も声も全く違う。
面白い事を見つけて、一人気ままに楽しもうとしている。どう考えても野次馬だな、これは。
笑いながらも、この話題は避けた方が良いと判断して、話を元に戻した。