第20章 秋祭りのお手伝い
「いい」
リボンへと伸ばしていた手が、実弥さんに掴まれる。
言われたこともよく理解できず、ついそのまま
「はい?」
「おかしくはないから、外さなくてもいい」
「えぇっ?本当におかしくないですか?客寄せはもう終わりだから、外してもいいのかなぁとは思ったんですけど。まぁ、今日一日つけてて、誰も私のことは見てない事が分かったので。それに頭につけてても自分で自分の姿は見ないから、つけてることすら忘れてますからね」
「…何だその考えは」
見慣れた実弥さんの呆れた表情に、やっぱり安心してしまう。
「気にしないで下さい。あ、実弥さん、ごめんなさい。いらっしゃいませ~」
お客さんだ。実弥さんに断りを入れ、すぐに接客をする。
「ありがとうございました~」
「意外とできるもんなんだなァ、ノブ」
店の後ろの方で見ていた実弥さんが、ニヤリと笑いながら揶揄う。
「そうなんですよ。驚いたでしょ、実弥さん」
「もっとあたふたしてるかと思ってたァ」
「ふふ。朝のうちはそうでしたよ。もう少し待って貰えます?おじさん達に報告しないといけませんから」
「時間はある。気にするなァ」
「はい。華子さーん」
お店の戸を開けて、華子さんを呼ぶ。
「どうしたの、ノブちゃん?あら、お迎えね」
返事をしながら、すぐに奥から出てきてくれた。こうやってすぐに出てきてくれるので、私でも何とか店番ができたのだ。
「はい。なので、そろそろ上がらせて頂いてもいいですか?」
「そういう約束だったからね。大丈夫よ」
「じゃあ、おじさんにも挨拶してきますね。実弥さん、もう少しだけ、待って貰えますか?」
「アァ」
厨房へ向かえば、おじさんと斉藤さんが片付けをしていた。もう商品は全て作り終えたということだろう。
「おじさん、すみません。お迎えが来たので、上がらせて貰ってもいいですか?」
「そういう約束だったからな。いいぞ」