第20章 秋祭りのお手伝い
瞬時に見た目で判断して、だけどそれを表に出すことなく、人当たりの良い笑顔で対応する。
現代ではそんな人ばかりだ。いや、そうじゃないと、やっていけなかったと思う。
だけど、実弥さんを始め、鬼殺隊の人達は個性が強いけど、どちらかというと感情は駄々漏れのような感じだ。取り繕う必要がないから、かもしれない。
そんな人達との関わりばかりだったからか、勇一郎さんのような人との関わりは何だか気持ちがモヤモヤしてしまう。
現代じゃ、そんなことは思わなかったのに。
まぁ、鬼殺隊でも、お館さまという、全く掴み所のない人はいるけど。
「あいつ、誰だァ」
後ろから刺々しい声が降ってくる。相変わらず不機嫌な物言いだけど、何故かその声を聞くと安堵感で満たされる。
振り替えれば、聞いた声のまま、不機嫌な顔をした実弥さんが立っていて、自然と笑みが溢れる。
「勇一郎さんですか?生地屋の息子さんで、隣町の呉服屋の若旦那さんですよ。蜜璃ちゃんとお出掛けした時に、行って。蜜璃ちゃんがお得意様だから、私にも声をかけてくれるみたいで」
そう説明するが、眉間の皺はますます深くなる。
「距離が近い」
普通だったと思うけど…とは思ったが口には出さず。そこで、はたと思い付く。
「あぁ。これですよ。リボンと前掛け。勇一郎さんの呉服屋さんで、この端切れ買ったんです。だから気になったみたいで」
エプロンとリボンを指差しながら説明する。
「そういや、何で頭につけてるんだァ?いつもそこにつけてたろ」
実弥さんがリボンをつけていた部分を指す。ほぼ毎日着ているが、まさか覚えてくれているなんて。旦那はだいたい気づかなかったし、気づいてもそれを口に出すことはほぼなかった。
だから指摘されるなんて全く思ってなかった。自分の事をちゃんと見てくれているんだ、と何だか嬉しくなる。
だけどそれとは反対に、リボンをつけている自分の姿がどうしても違和感しかなく、上がった気持ちもすぐに萎えてしまう。
「あー。それはですね、生地屋の幸子さんが買いに来られた時に、有無を言わさずつけられました。おかしいですよね。やっぱり外そうかな」
そう思い、手をリボンへと伸ばす。