第20章 秋祭りのお手伝い
「そこまで生地を大切に使ってくれると、売る方としても嬉しいよ。だけど、細かい作業は出来上がりは綺麗になるけど、本当に時間もかかるし、大変だよね」
「はい。仕事の合間を見つけて、少しずつ縫ったんですよ。一つ一つは小さいので時間はそこまでかからなかったからできましたね。そうそう、元々リボンは、本当はここにつけてたんですよ。今日は幸子さんに髪の毛に結ばれてしまって…」
リボンを結んでいた場所を指差す。笑いながら答えたが、幸子さんの強引さを思いだし、若干ひきつっているのが自分でも分かる。
「え?そのリボンは髪の毛を結ぶ用じゃなかったの?」
「いや、元々はそうなんですけどね。作ったものの、流石に年齢的に厳しいなぁって。でも可愛いらしくできたので、この前掛けにつけてたんです。そしたら、毎日使えるでしょ。だけど、今日は幸子さんに見つかりまして…ほぼ強制的に…」
ふと、その強引さを思い出す。幸子さんは勇一郎さんの母親だ。変なことは言えないなぁと、最後は視線を反らしながら、ぶつぶつと呟いた。
「ははっ!強引な母さんならやりそうだ。でも、似合ってるよ。年齢的に厳しいってのが、僕には分からないけど、可愛いよ。その生地を使ってるから、落ち着いて見えるし。全然つけてても問題ないと思うよ」
流石、呉服屋の若旦那だ!お店のお客さんじゃないのに、褒めてくれる。お世辞だとは分かっていても、やっぱり褒められると嬉しいものだ。
「ありがとうございます。お世辞でもすごく嬉しいです。今日は客寄せのためにと、心を決めてがんばってますから」
「いや、本当に似合ってるんだけど」
そうは言われても、お世辞だとしか思えない。勇一郎さんの顔もひきつっているし。
「本当にお上手ですね。でも、私に言っても何も出ないですから。お店のお客さんを褒めてあげてくださいね」
「いや、本当…」
このままお世辞を続けられるのも身が持たない。急いでお饅頭を包んでしまおう。そう思えばすぐに準備できた。
「はい、お饅頭。お待たせしました」
「ありがとう。ノブちゃん、お店は最後まで手伝うの?」
「いえ、夕方前には上がりますよ。もう少しですかね」