第20章 秋祭りのお手伝い
「構いませんよ。そのままだと、出店をひっくり返してしまいそうですから。こっちへどうぞ」
販売側のスペースを手で示せば、勇一郎さんも前のめりだった体を起こす。
「そうだね。ごめん。ありがとう」
そう言いながら、すぐに移動してきて、じっとエプロンを見られる。
流石にちょっとじっくり見られると、所々粗があるので、気を逸らす意味で説明をし始める。
「洋食屋さんの店員さんのを参考にしたんです。楽ですよ、これ。まぁ洋食屋さんのはもっとフリフリしてますけどね。普段使いにはこれくらいがいいですから」
「おもしろいね。本当、これなら普段使いできそうだね。リボンもこの生地を使うと、大人っぽくなるね」
エプロンから、リボンに興味が移ったようだ。
「見にくくないですか?何ならリボン、取りましょうか?」
「いやいや、そのままでいいよ。ちょっと見せてね」
「どうぞ」
髪につけたまま、リボンも手に取り見ているようだ。外した方が絶対に見やすいと思うのに。外す口実が出来ず、ちょっと残念だ。
「へぇー。端切れをつなぎ合わせてるんだね。こっちの前掛けも小さいのがたくさん縫い付けてあって可愛いね。でも大変だったでしょう、これだけ細かいのをつけるのは。だけど、何でここにつけたの?」
リボンを見終わった後は、一歩下がってエプロンの全体を見た。その後すぐに端切れを縫い付けている部分を少しだけ持ち上げて、尋ねられた。
「実はそれ、特に意味はなくて」
「えっ?じゃあ、なんで?」
真一郎さんは私の答えが想像していたものと違ったようだ。持っていたエプロンから手を離し、私の顔を見いっている。
「最後の最後の端切れで、勿体ないから、全部縫いつけたんですよ。ただの勿体ないっていう理由です。自分が身につける物ですから、あまり深くは考えてなかったですね。取りあえず勿体ないからつけようって、感じです。でも、たくさんあったから、大変でしたよ。細かいし。出来上がりは自分も満足していたので、誉めて貰えて嬉しいです」
勇一郎さんは呆れていると思う。普通は色々と考えて作るのだろうけど、大雑把な私だから特別な理由はない。何も考えずに、勿体ないからつけるなんて、呉服屋さんからすると、考えられないだろう。