第20章 秋祭りのお手伝い
二人とも顔を真っ赤にしてるけど、感情は違う。
般若のように怒っている斉藤さんと、恥ずかしそうにうつ向いている華子さん。初々しさ、だろうか。何だか二人とも可愛らしい。
「何がそんなに怒るところですか?仲良きことはいいことですよ。それとも仲良い事は乳くり合うって言わないんですかね?」
ゴンッ!また頭に同じ衝撃が走る。
「痛い~!」
「煩いッ!もうお前は喋るな」
その後、その言葉で話しは有耶無耶にされたまま、二人とも店の中に戻ったので、一人で店番を続ける事になった。
何だか釈然としなかったけど、頭の痛みがかなり続いていたし、お客さんも次から次に来たので、そのままにしていた。
結局、その後、このやり取りを店の中から聞いていたおじさんが、こっそりやって来た。めちゃくちゃ笑いながら、そういう時は仲睦まじいとか言えばいいと教えてくれた。
「乳くり合うとか、俺らが言うような言葉だよ。どこで覚えてきたんだ、お前。やっぱり年齢誤魔化してるだろ」
「記憶がないからですね。もしかしたら、おじさんと変わらない位かもしれませんよ、私」
年齢は誤魔化してはない。言ってないだけだ。ただ、見た目が随分若いから、みんな私が若いと思っているとは言えず、適当に笑って誤魔化した。
そんなこんなはあったが、売り子としての役割も特に問題なくこなしていく。昼食休憩で、交代で食事を摂ったが、すぐに店番に戻った。
久しぶりの仕事はとても充実していて、あっという間に時間が経っていて、随分と日も傾きかけていた。
「もうそろそろかな」
「何が、もうそろそろなのかな?」
独り言に返事があり、驚いて声のする方を向ければ、知った顔が笑っていた。