第20章 秋祭りのお手伝い
クスクスと笑いが漏れ出る。華子さんだ。
「本当、二人とも絶妙な掛け合いね。何でそんなにポンポン言葉が出てくるの?本当面白すぎよ、二人とも」
「私は真剣なんですよ。面白くしようとか、一切思ってないですから。夫婦漫才とか言わないで下さいね、華子さん」
「あら、ノブちゃんに先に言われちゃったわ」
まだ笑いは引かないようで、右手を口の辺りに当て、クスクスと笑っている。
「まぁ、斉藤さんはぁ、華子さんに対しては優しい言葉しかかけないでしょうからねぇ」
たっぷりと含んだ物言いで、斉藤さんに向かって吐き出す。
「そりゃ、ノブとは違うに決まってるだろ。お前は馬鹿か」
当たり前の事だと言わんばかりの態度に、分かってはいても少しだけ苛つく。
「はい~っ??馬鹿じゃないです。大雑把だし、常識は知らないですけど。でも、記憶がないからですからね!」
「常識ないって…自分で馬鹿って認めてるぞ、それ」
「ええっ!そんな」
自信を持って言ったにも関わらず、斉藤さんに至極全うな突っ込みを入れられた。挙げ句の果てには、呆れた顔で見られてしまった。
「はぁ。もう、斉藤さん。意地悪ばっかり言ってると、華子さんに嫌われますよ」
「そんなことはない…筈だ…」
「だって、華子さんには優しくしてても、私に対するような物言いもするわけでしょ?それが、華子さんに向かわないとは言えませんよねぇ」
「そんな訳あるかッ!」
「いや、でも、今はなくても、長く付き合ったり、今後夫婦になって長い時間過ごすようになれば、好意だけではどうしようもなくなりますよ。ラブラブ…いや、ちちくり合う?のは付き合い始めて最初だけですよ」
「ノブッ~!!!お前は何て事を言ってんだぁッ!!!」
その声と共に、頭にものすごい衝撃が響く。そして遅れて痛みだす。
うん、間違いない。これは叩かれたな…しかもけっこうな勢いで。