第20章 秋祭りのお手伝い
「うん。可愛いわよ」
腕を組みにっこりと笑いながら言われるが、素直に受け取れない。どうしてもからかわれているのではないかと、猜疑心しか沸き上がらない。
「え?本当に大丈夫ですかね、幸子さん?年齢的に厳しいと思うんですけど。浮いてません?おかしくないですか?」
「何言ってるの!ノブちゃんは若いんだから、大丈夫よ。それに、このリボンは似合ってるし」
「本当ですか?お世辞とかじゃないですよね?ちょっとどころかかなり不安でしかないんですけど」
どうしても年齢的に厳しいというのがまず一番に浮かぶ。それに若いと言われても、普段鏡で自分の姿を確認することも殆どないので、若いという感覚があまり、というかほぼない。
かといって若返ったという事を理解した上でも、そもそもリボンなんて小学生の低学年の頃につけた位だ。可愛いとは思うが、流石に自らつけようとは思わない。
幸子さんが嘘を言う事はないとは分かっていても、自分の感覚が四十のままなので、やっぱり納得できないのだ。
そんな私に、流石に呆れた顔で幸子さんが言う。
「もう。お世辞じゃないわよ。ノブちゃんにちゃんと似合ってる。どっちもうちの生地よ。いいものなんだから、ちゃんと自信を持って!あ、華ちゃん、どう?結んでみたんだけど、似合うわよね」
幸子さんは、ちょうど店から出てきた華子さんにも同意を求めれば、すぐに私の髪についたリボンに目を向ける。
「可愛い~!似合ってるわ。結ぶとまた印象が変わるのね」
「ほら、華ちゃんもこう言ってるんだから、大丈夫よ。それに今日はお祭りだし、売り子さんだからね。少しはお洒落しとかないと」
「…そうですかね」
これだけ言われても納得できない自分にも呆れてしまう。
「そうよ!ほら、もう気にしない気にしない!」
「分かりました!今日は売り子さんですから…うん!腹を括ります。見せ物にもなります、私」
ピエロにでも何にでもなってやろう。
だけど、二人に向かって言った私の決死の決意は、どうも伝わらなかったようだ。
「ノブちゃん、ちょっと違う気がするけど…」
「ふふ。まぁいいんじゃないの。それにしても意外と頑固なのね、ノブちゃん」
二人はそれぞれそう呟き、顔を見合わせ笑い合う。その呟きに答えることなく、私も一緒に笑った。