第20章 秋祭りのお手伝い
「いやー、それにしても言ってみるもんですね。本当に売ってくれるなんて…」
嬉しくて、顔が緩みっぱなしだ。そんな私の話は最後まで続くことなく、斉藤さんから頭を叩かれ、パスッと乾い音が響く。
「おいッ!ノブ!お前、少しは遠慮しろよ」
おばさんの厚かましさは今に始まった事ではない。斉藤さんはさすがにお義父さんになるであろう方だ。気を遣うのは分かる。
でも、私の食べたい気持ちはあるのだ。
「だって、食べたかったんですもん。あんこだけ」
「何であんこだけなんだよ、お前は…」
「いいんだよ、義雄。俺がいいって言ったんだ。それに、うちのあんこがそれだけ美味しいってことだろ?職人としては嬉しい事じゃないか」
おじさんが助け船を出してくれた。
「そうですよね、おじさん!ありがとうございます!本当大好きです」
「はははっ。本当面白いなぁ、ノブは。それはまた今度話すとして。ほら、二人ともさっさと食べろ!店を開けるぞ」
「そうだな、ノブ。食べよう」
「そうですね」
状況を察して顔を見合わせた後、二人とも喋ることなく串団子を食べた。
私達のその様子に、おじさんと華子さんが顔を見合わせて笑っていたことは、気づきもしなかった。
美味しいこともあってすぐに食べ終わり、腹拵えは万端だ。
「さぁ、今年も秋祭りだ。無事にこの日を迎えられたことを、そして今年は義雄と、ノブと、二人と一緒に迎えられたことを嬉しく思う。三人とも、大変だとは思うが、今日はよろしく頼むな。よし、開店だ!」
「はいっ!」
おじさんの掛け声で気合いが入った三人の声が合わさる。お店の扉を開ければ、もう少しずつお客さんも歩いているし、お店も準備を始めている。もう、早いお店では営業している所もある。
作った串団子を並べていく。その途中もお客さんが覗いたり、気にしながら通っていく。
いつもと違う町の雰囲気に、私の気持ちも高揚していくのがわかる。お祭りに心を踊らせるなんて、子どものようだと、少しだけ自嘲するが、気持ちは勝手だ。
抑えようとしてもなかなか抑えきれない。今日一日がいつもと違う日になることが分かっているからこそ、楽しくて仕方がない。
気持ちを落ち着かせるように、目の前のお団子達をキレイに一つずつ並べていく。