第20章 秋祭りのお手伝い
「そろそろ時間だな。表も騒がしくなってきたようだし。ほら、ノブ、ここの皿の団子は味見をしていいぞ」
気づけばおじさんの前には皿に載った団子があった。
「いいんですか?」
「朝からずっと作業してんだ。今から店を開けたら、ひっきりなしに客が来る。昼過ぎまではなかなか休めんだろうからな。ちょっとした腹ごしらえだ。華子も義男もさっさと仲良く休んでるぞ」
二人を見れば隣同士に座って串団子を頬張っていた。華子さんが二人分のお団子が載っているであろうお皿を持っていて。二人の距離は本当に自然だった。
私が見るとほんのりと顔が赤くなり、二人とも気まずそうな表情をしている。まさか自分達の話になるとは思わなかったのだろう。こっそりと二人とも距離を取ろうとしているのが見え、二人の仲がしっかり育まれてるんだろうな、と思えた。
「ふふ。いいもの見ました。気持ちは満腹ですけど、お腹は実際膨れてないので、いただきますね」
二人からおじさんに顔を向けてにっこり笑う。
「おう。うまいぞ。そこの二人よりは甘くないがな」
おじさんもにっこり笑う。二人をからかっているのだろう。悪戯が成功したような若干含んだ笑いだ。
近くの椅子に座り、串団子を頂く。
「おいしい~」
相変わらずここの甘味はどれも当たりだ。
「うまいか、なら良かった。ノブは本当うまそうに食うから、こっちも作った甲斐があるってもんよ」
「本当おじさんの作る甘味はどれもおいしいです。いつも迷うんですよ~どれもおいしいから」
「その割にはいつもおはぎじゃねえか」
おじさんも椅子に座り、会話の合間に串団子を口に運ぶ。
「居候先の方がおはぎが好きなんですよ。それに私の一番好きなのはあんこですから、結局おはぎになっちゃうんです。そうだ。おじさん、今度、あんこだけ売ってくださいよ」
「はぁッ?あんこだけか?」
おじさんは心底驚いた顔をしている。
まぁ突拍子もないお願いだよな、と自分でも思う。
現代では普通に売っていた物も、この時代では売っていないのだ。