第20章 秋祭りのお手伝い
「華子さん、すみません。何をしたらいいですか?」
急いで持ってきたエプロンをつけて、華子さんの下に行く。
「大丈夫よ。こっちまで声が聞こえてて、楽しかったわ。ノブちゃん、その前掛け、可愛いわね」
いつもお屋敷で使っているエプロン。割烹着ばかりで、夏場はどうしても暑く、また馴染みもなかった。エプロンが欲しいと、型紙も使わず何となく作ったものだ。
「夏場は暑くて、割烹着着る気にならなくて。取りあえず作ったんです。ちょうどこの色の生地も安くて売ってたので」
「落ち着いた色合いね。それにこのリボンと同じ柄がすごく素敵」
そう。落ち着いた色合いだ。実弥さんのイメージカラーのような深い緑だ。いつも行く生地屋で一目惚れだった。あまりの食いつきに、幸子さんにも笑われた位だ。
リボンは、勇一郎さんのお店で買った生地で作ったものだ。髪につけるのは結局年齢的にやっぱり厳しくて。四十でリボンとか、ちょっとハードルが高すぎる。
でも、実弥さんが似合うと言ってくれた物だから、身につけたくて。結局左胸の辺りに結んでいる。それに同じ生地の余りもエプロンに縫い付けたのだ。
自分でも可愛くできたと思って使っていたが、外で着ることはなかったので、褒められて本当に嬉しかった。
「ありがとうございます。本当に嬉しいです」
「ノブちゃんは何でも作っちゃいそうね。あ、この串にお団子をさしてくれる?」
無駄口はこれくらいにして、作業に移る。
お団子も売るようだ。串に小さく丸められた団子をさし、並べていく。今日は店先で売るので、いつもの販売スペースも作業場と変わっている。
黙々と作業を続けていく。華子さんは、団子を丸める作業をしている。既にかなりの量になるが、まだまだのようだ。
「結構作るんですね」
「そうなのよ。秋祭りは収穫の感謝が始まりだから、食べ物は豊富なのよ。串にさすと食べやすいでしょ?みんな結構買ってくれるのよ」
「少しずつ色々食べたいですもんね」
「これ以上作るけど、毎年夕方には売り切れちゃうからね」
「そうなんですね!がんばって作ります」
「ありがとう。無理しないでいいからね」
「はい」
その後もお祭りのことや甘味のことを華子さんに教えて貰いながらも、作業の手を休めることはなかった。