第20章 秋祭りのお手伝い
「斉藤さんこそ、お元気そうで何よりです。袋、一つ持ちますよ。それよりこちらで着々と地盤固めをしているようで…」
持っていた袋を受け取りながら話していたのだが、私の言葉は途中で斉藤さんに遮られてしまった。
「煩いっ!」
ゴンッ!
話の途中で、斉藤さんのゲンコツが飛んできた。実力行使もいいところだ。
「痛いです。急に叩くなんてひどいです」
かなり緩かったけど、一応抗議の意味も込め、やや睨みながら言ってみる。
「そんなことはない。軽くしか叩いてない。というか、相変わらず煩いな。お前、こんなんで不死川様んとこでちゃんとやってるのか?迷惑かけてないか?」
流石にすぐに反論される。そして話題を変えられたけど、これ以上言うと更にどやされそうなので、蒸し返すことなく答える。
「取りあえず煩そうにされることはありますけど、慣れて貰ったんじゃないですか?だいたい呆れられてます」
「…いいのか、悪いのか。まぁ、追い出されてないところを見ると、上手くやってんだろ」
斉藤さんの作業を手伝いながら、話し続けていると、呆れた表情の斉藤さんだったが、最終的には上手くやっていることで安心したようだ。
「はい。実弥さん、優しいですから」
正直そう思うのだが、だいたい他の人はそう思わないらしい。
「…それを言うのは、ノブくらいだぞ」
眉間に皺を寄せながら、そう呟く斉藤さんに、苦笑しながら答える。
「そうですかね?今日も帰りにお迎えに来てくれて、一緒にお祭り回るんですよ。私が迷子になるの心配してくれて」
「はぁ~やっぱすげぇなぁ、ノブは。そんなことするのは、お前だからだよな」
「それも実弥さんが優しいからですよ」
「ははは。結局そこか。本当隊の奴らが聞いたら卒倒するぞ」
「そんなことはないと思いますけど」
「本当、お前らは仲がいいな」
「そうですかね?」
「積もる話もあるだろうが、そろそろ仕事をして貰うぞ」
「「はい!」」
おじさんへの返事がきれいにハモる。
「ハッハッハッ!息も合ってるし、いいぞ。じゃ、ノブは華子の手伝いをしてきてくれ」
豪快に笑いながら、指示を出される。斉藤さんは言われなくても目線で分かるようだ。すぐに次の作業に取りかかっている。
「分かりました」
そう返事をし、華子さんの所へ向かった。