第20章 秋祭りのお手伝い
秋祭り当日。
遠足前の子どものように、いつもより早く目が覚めた。うっすらと明るくなっているので、今日も天気は良さそうだ。
ぐっと一度伸びをして起き上がると、準備していた服に着替え、布団を片付ける。
まだ時間に余裕があるから、朝食も作れる。そう思い、台所に向かう。実弥さんの部屋の襖は開いていた。
まだ戻ってないようだ。
冬に向かって行くにつれ、段々と夜の時間が長くなっていく。太陽の出ていない時間が鬼の活動時間だ。夜の時間が長くなればなる程、鬼が動ける時間が増えるのだ。
その分鬼殺隊の隊員は、拘束時間が増えると言うことだ。時計で動くと言うより、太陽の状況を見ながら動いている。
最近、真夏の時期に比べると、実弥さんの帰りは遅い。
これから、日が短くなるにつれ、季節は冬になる。文字としての事実は知っていたのだが、やはり夏場に比べて大変な時期になるのだと実感する。
色々と考えながらも、体はしっかりと動き、着々と家事をこなしていく。お風呂も沸かしたし、ご飯も炊き上がった。
簡単に朝食を食べ、片付けまで済ませる。
部屋に戻ろうとした時に、玄関が開く音がした。
「お帰りなさい、実弥さん」
そのままの足で、玄関に行き声をかけると、実弥さんが少しだけ怪訝そうな顔して、振り向く。
「ん?まだいたのか?」
「今から出ようと思っていたところです。あ、実弥さん、朝食は準備してますので、食べてくださいね。お昼はお握りにしてます。あとお風呂も沸いてるので、どうぞ。洗濯物は籠に入れてて下さいね。明日まとめて洗いますので」
「はぁ。結局全部やってんじゃねえかァ」
私の怒涛の物言いに、実弥さんは圧倒された様で、溜め息と共に呟いた。
「興奮してたんでしょうね。早めに目が覚めちゃって。あ、でも掃除はできてないですし。朝食の片付けはお願いしますね」
「興奮して早く起きるとか、子どもみたいだなァ」
「私もそう思いました。お店のお手伝いもですけど、実弥さんとお祭り回るのがとっても楽しみなんです。今日はよろしくお願いします」
呆れ顔の実弥さんに追従し、私も困惑したような表情で、同意する。だけど、祭りの事を想像すると、一転して満面の笑みに変わったのが、自分でも分かった。