第20章 秋祭りのお手伝い
「華子さん、そう言う意味じゃないですから。それよりも、明日は斉藤さんもお手伝いに来るんですよね?斉藤さんは何をするんですか?」
話を私ではなく、斉藤さんにすり替える。
「義雄さんは父の手伝いをしてもらうの」
「婿入りのための修行ですね」
そう言いながら、どうしても顔がにやけてしまう。
「ちょっと!ノブちゃん。違うわよ」
頬を赤く染めて否定するが、家業を手伝うのだ。どう考えてもそうとしか思えない。
斉藤さんも今は隠として働いてはいるが、今後は華子さんと甘味屋をしていくのも、斉藤さんの人生にとっては良いと思う。何より鬼からは遠くなる。
「お二人の仲が順調そうで、何よりです。それに、私も斉藤さんには久しぶりにお会いするので、とっても楽しみです」
「久しぶりに夫婦漫才が聞けるのかしら?」
華子さんからその言葉を聞くとは思わなかったので、吹き出してしまった。
「いやいや、斉藤さんの夫婦といえば華子さんとでしょう」
「ノブちゃん!からかわないの」
少しだけ落ちいていたのに、私の言葉に反応して真っ赤に染まる。
元々綺麗な人だけど、顔を染めて恥ずかしそうにする姿は、色気も含んでいて。大人の女性としての魅力が溢れんばかりとは、こういうことなのだろう。
四十のおばちゃんは、こんな色気は持ち合わせていない。元々色気とは無縁の生活を送ってきた。少しだけその色気を譲ってほしい…。
私が見てもクラっとくるのだ。
男性がそんな姿を男性が見れば、色々な欲を掻き立てられるだろう。
うん、罪作りな人だな、華子さん。
「からかってませんて。華子さんと斉藤さん、お似合いだと思いますよ。それに、斉藤さんは私の兄みたいなものですし」
「じゃあ兄妹漫才ね」
「いやいや、漫才しているつもりは全くないんですよ」
「ふふふ。取りあえず明日が楽しみだわ」
「私も楽しみです」
その後も少し仕事を教えて貰いながら、明日の仕込みを手伝ったのだった。