第19章 恋柱と蛇柱
【実弥side】
「まぁ、喧嘩っ早そうだから、そこは真似しませんけどね」
そうかと思えば、ニヤリと笑ってそんなことを言う。
「アァッ!何だとォッ!」
苛つきから、声を荒げる。
「ほらほら」
だが、ノブは全く意に介す様子はない。こんな所だと、言わんばかりに、余裕の笑みが、更に俺の気持ちを逆撫でする。
「アァッ!」
更に声は大きく、睨んでいたにも関わらず、ノブは全く予想外の言葉を紬ぎ出す。
「怒らないで下さいよ。大好きですよ、実弥さん」
「脈略が全くねぇ!」
一瞬何を言っているのか理解が追い付かず、言葉を理解した時にはその意味までは、全く理解できない。
そんな中一言、何とか吐き出した。
「一人だったから、こうやって話ができるのも嬉しいですしね。そもそも、実弥さんとこんなやり取りをするのが好きなんですから」
ノブの考えている事は、本当に理解できない。
俺の怒鳴り声は、鬼殺隊員だろうと、恐れて何も言わなくなってしまう。まずもって関わろうとはしない。
それなのに、こんなやり取りでさえ好きだと言う。
本当にこいつの頭の中はどうなってんだァ。
考えても理解できないのは分かっている。
そんな事を考えていれば、先程の怒りは鳴りを潜めていた。
「そうかい。勝手に言っとけェ」
これ以上、この事については話す気はしない。
よくもまぁ、こいつは…俺を振り回してくれる。
「そうします」
弾んだ声から、嬉しそうに笑っているのだろうと想像できた。
その後は残りの夕食を食べながら、俺がいなかった日のノブのことや、鬼狩りのことなどを話した。
そして、またすぐに夜になる。準備を整え、鬼狩りに出る。
もう、いつもの日常に戻っていた。