第19章 恋柱と蛇柱
【実弥side】
ノブ本人が自覚しているように、その話をする時は、決まってこいつの存在が曖昧になる。
そんな時にノブが放った言葉が、刃のように俺を貫く。
俺が…
こいつの…
ノブの存在する意味…
貫かれた場所からなのか、ドロリとした感情が奥底で蠢いた。何かは分からないが嫌悪感が込み上げ、ノブを睨む。だが、それもお門違いだとすぐに顔を反らし、呟いた。
「…取りあえず、俺が叩き出すまではァ、ここにいていい」
そう呟きながらも、あり得ねえだろうなと、一人嘲笑った。
話題が変わっても、会話は続く。
自分でも過保護過ぎるとは思ったが、甘露寺はノブに会いに来てくれたようだ。だが、伊黒まで来たとは驚きだった。
それだけじゃねぇ。伊黒に事もあろうか、甘露寺にリボンを結ばせるという暴挙に出たという。
あり得ねえ。
未だに、あの伊黒が、リボンを結ぶなんて姿は想像できない。見てみたい。
それにしても伊黒の事を知らないにしても、よく言ったもんだ。肝が座ってるのか、回りを見ていないのか。
ノブや伊黒、甘露寺の姿を想像すると、あまりにも笑えない状況に笑いが込み上げる。
ノブもちょっと無茶振りしすぎたと、反省しつつも、すぐに切り替える。
ノブらしいと思った。だが、一応意識して、やっているようだった。少しだけ驚いた。元々そういう奴なのだろうと思っていたからだ。
俺は思ったらすぐに行動する。考えるよりも先に手足が出る。考えるなら、その分早く動いた方がいい。
ウジウジと考えるなんて、時間の無駄だ。
「実弥さんのそんな所、見習いたいなぁと思ってるんですよ」
素直にそう言われれば、悪い気はしない。