第19章 恋柱と蛇柱
「済んだ事は仕方ねぇ。それにしてもあいつにリボンを結ばせるとは…。ちょっと見てみたかったな。それにしても、そんな事、誰も言わねぇだろうなァ」
クククッと悪戯っぽく笑いながら、実弥さんが言う。
「そうですよね。ちょっと無茶振りしすぎましたね。でも、もう済んでしまったので、仕方ないです。蜜璃ちゃんも喜んでくれたので、良かったんです」
「はっ!お前らしいな」
「私らしいですかね?」
「大雑把で、すぐに切り替えられる」
「大雑把、関係ありますかね?まぁ、引き摺ってもどうしようもならないからですね。できるだけ引き摺らないように、切り替えるように意識はしてるんですよ。実弥さんは、そんなこと、ないでしょ?思ったことはすぐに実行って感じですし」
そう私の事を評価してくれるのは嬉しい。元々引き摺る方だから、そうしないように気をつけていたのだ。
「ウジウジ考えるのは性に合わねェ」
そうだよなぁと思う。
「実弥さんのそんな所、見習いたいなぁと思ってるんですよ」
そう言えば、少しだけ実弥さんの顔が綻ぶ。
「そうかァ?」
「はい。まぁ、喧嘩っ早そうだから、そこは真似しませんけどね」
ニヤリと笑いながら言えば、安定の反応を示してくれる。
「アァッ!何だとォッ!」
「ほらほら」
「アァッ!」
思った通りの反応で、怒っているのに可愛らしく思えてしまう。あぁ、何て素敵な時間なのだろう。そう思うと、自分の顔は緩みっぱなしだ。
「怒らないで下さいよ。大好きですよ、実弥さん」
「脈略が全くねぇ!」
ごもっともな突っ込み。だから、実弥さんとの会話は飽きることがない。
「一人だったから、こうやって話ができるのも嬉しいですしね。そもそも、実弥さんとこんなやり取りをするのが好きなんですから」
「そうかい。勝手に言っとけェ」
結局顔を背けながら言われたが、さっきまでの怒った表情ではなく、呆れた表情に変わっていた。
あぁ、やっぱり楽しい。そして幸せだ。
「そうします」
夕食を食べる間、そして食べ終わってからも少し、他愛もない話を続け、いつもの日常に戻っていったのだった。