第6章 お屋敷での生活
「不死川様から許可がでたから、タメ口で話すぞ」
「はい。私もそっちの方がいいです。名前も呼び捨てで構いませんから。改めまして、斉藤さん。今日からよろしくお願いします」
「おう。ビシバシいくぜ、ノブ」
「いえ、お手柔らかにお願いしますよ、斉藤さん」
「いや、不死川様から直々に言われてるからなぁ。覚悟しろよ」
「えぇ~!」
早く覚えたいのは山々だが、あまりに厳しいのは勘弁だ。
「ははは。なかなか面白いやつだな。さぁ、お喋りはこれくらいにして、早速始めよう。朝食、作るぞ」
「はい」
いきなり料理かぁ。そりゃ、夫も子どももいたからら作ってはいた。でも、大雑把な性格だからか、料理は好きじゃなかった。
いい時代だった。レンジでチンするだけや、炒めるだけ、揚げるだけに準備されたものがたくさんあった。文明の力に頼りまくっていたよ、私は。
でも、この時代には間違いなくないものばかりだ。
ここで生活する上で一番の正念場だ!
「おい…野菜は切れてはいるが、出汁も取らずに突っ込むんじゃねぇ」
「それじゃ、米が流れて行くぞ」
「薪を次から次に入れるな」
斉藤さんはとても器用な人だった。丁寧に教えてくれるが、よくも悪くも大雑把な私は何度も指摘されまくりだった。
「ほぼ、俺が作ったな。お前、二週間でどうにかなるような気がしないぞ」
「何だかそんな気がします…いや、でもできるようにならないといけないので!!」
「そうだな。俺も気合いを入れないとな」
いやいや、これ以上気合いを入れられても、ついていける自信がありません。
「お手柔らかにお願いします」
やや消え入りそうな声で答える。
「不死川様の分を準備して、俺らも食べようぜ」
「はい。お腹すきました」
稽古中の実弥さんの分はおにぎりを準備し、斉藤さんと二人、私の部屋で食べる。
「おいしいです、斉藤さん!人が作ってくれた食事って、なんでこんなにおいしいんでしょうねぇ」
「ノブの場合は雑すぎるからうまくないんだろ」
「…そうでしょうね」
鋭い突っ込みが私を襲う。
「飯食ったら、次は掃除だな。お前、絶対雑だろうなぁ。今から思いやられる」
「がんばりますから、大目にみてください…」
掃除も怒鳴られながらだろうなぁと思いつつも、すがるような目で斉藤さんを見ていた。