第6章 お屋敷での生活
昨日は早く寝たお陰か、日が昇る頃に目が覚めた。
布団を片付けたり、身の回りの整理をしていると、玄関から声が聞こえた。
「おはようございます。ごめん下さいませ~」
昨日言っていた隠の人だ!
「は~い。少々お待ちください」
返事をして、玄関に急いで行く。ガラス越しに黒い影が見える。
「どなたでしょうか?」
「鬼殺隊の隠の者です」
「お待ちしておりました」
玄関扉をあけると、そこには真っ黒な衣装に身を包んだ隠がいた。男性のようだ。
「あなたが三井様でしょうか?私、隠の斉藤と申します」
「隠の斉藤さんですね。私は三井ノブと申します。お忙しいのにすみません。記憶をなくしてしまって、何も覚えてなくて…よろしくお願いします」
「畏まりました」
「あのー、斉藤さん」
「何でございましょうか、三井様」
「何で敬語なんですか?間違いなく私の方が年下だと思いますし。私の方が、今日から斉藤さんに色々と教えて頂くのに…。三井様の様もやめてください」
「三井さまは不死川様の大切なお方だと、お館さまから申し遣っています。ですから…」
そんなことだろうと思ったよ。勘弁してくれ。
これじゃ、鬼殺隊の中ですぐに噂になるよ。お館さま、昨日言ってたことと違いません?
私、ひっそりと暮らしたいんですけど…
「私は実弥さんの恋人でも大切な人でもありませんッ!ただの厄介者の居候なんです。だから、普通に接して下さい~。お館さまは揶揄ってるだけです」
「お館さまが揶揄ってるとは、聞き捨てならんなァ」
後藤さんとの会話を聞いていたのだろう。実弥さんが突っ込んできた。
「おはようございます、不死川様。今日から三井様のお世話をさせていただきます」
「おう。よろしく頼むぜ、斉藤。それと、こいつは俺とは何の関係もないから、タメ口で構わないぞ。それとなかなか理解しない奴だから、厳しく頼むぜェ」
あー、実弥さん。お館さまが揶揄ってるって私が言ったこと、絶対根に持ってるなぁ。
「はい。ビシバシ指導させて頂きます!」
「おう。がんばれよォ、ノブ」
ニヤニヤしながら、ポンと私の頭を軽く叩く。
「…はい」
実弥さんは用事は終わったとばかりに、そそくさと部屋に戻って行った。