第2章 暗闇からの光
真っ暗な中に放り出されて、長い時間立っていた気がする。もしかしたら一瞬なのかもしれない。
時計もないし、確認できないから分からないのだ。
この立っているというのも、宙に浮いていると言った方が近い。
足がしっかりと地に着いた感じがしない。
やっぱり私は死んだんだと思う。
でもそう思った所で、この状況は全く変わらない。一体どうしたらいいのだ。
死んだことがないから、どうしたらいいのか全く分からない。
待っていれば終わりが来るのか、何もしなければこのままの状態が続くのか。
「どうしたらいいんだー!」
大声で叫んでみる。
もちろん返事はないよね…。まぁ、返事されたらされたで怖いからいいけど。
でも、声を出したことで、気持ちが落ち着いてきた。
「死んでしまったことは仕方ない」と思う。
だがこの状況が続くのは好ましくない。死ぬなら死ぬで終わってもらわなければ。このままの状態は嫌だ。
「実弥さんだったらどうするのかなぁ」
ふと脳裏に浮かんだ。
ここで出たのが夫でもこどもたちでもなく、実弥さんだったことに、笑いが込み上げてきた。
夫やこどもたちのことを考えれば、どうしたって気持ちが落ち込んでしまう。だって、死んでしまったのだから後悔ばかりだ。
でも実弥さんのことを考えれば、こんなときでも私は明るい気持ちになれる。
とりあえず、なってしまったものは仕方ない。もう、どうにもできない、と気持ちを切り替える。
気の持ちようだというけれど、本当かもしれない。
少し周囲の暗さが和らいできた気がする。
「ははははっ」
また、笑いが込み上げてきた。
その瞬間、真っ暗だった世界に光が差し込んできた。
あまりの眩しさに目を閉じる。
やっとお迎えが来てくれた、と思いながら。