第1章 現世
荷物を助手席に置き、エンジンをかける。
一おかしな音がしたような気がするが、その後はいつもと変わらない。
一瞬だったので、気のせいだろうと、あまり気にもとめず出発する。
来た道を帰る。いつも通りだ。
あと少しで家に着くところで、車から変な音がし始めた。
ヤバイ。故障かも。さっきの変な音は気のせいじゃなかった!
家まであと少しだから、何とか持つかなと思いつつ、ハンドルを握り直し、アクセルを踏む。
少し走らせた所で、目の前の真っ直ぐに続く道が、突然ぐにゃぐにゃになった。
突き当たりの角を曲がれば家へと着くのに。
何が起きてるの?!
真っ直ぐな道が波のようにぐにゃぐにゃとなっている。
車も傾き、横転でもしたような感覚だ。
何もできない。
体が飛ばされそうになり、ぎゅっとハンドルを握りしめる。
その瞬間、目の前が真っ暗になった。
突然真っ暗になったのだ。
さっきまで見ていたぐにゃぐにゃの道も、車が回転するような感覚も、突然なくなったのだ。
道に放り出された訳でもない。
ただ真っ暗な場所に立っていた。
時間が止まったような感じだった。
あぁ、私は死んでしまったのだ、と思った。