第19章 恋柱と蛇柱
そこからは急いで作った。
味噌汁をまず作り、実弥さんに出す。魚を煮付けていれば、すぐにご飯も炊き上がる。
お漬け物も一緒に出せば、夕飯の出来上がりだ。
「急がせてすまないなァ」
「いえいえ。野菜の切り方とかは雑ですけど、味は大丈夫な筈です」
簡単に片付けながら、答える。
「ん。うまい」
「良かったです」
「あ、これだろ。切れてねェ」
箸でつまんで見せてくる。
急ぎすぎて、雑に切った分、切れていなかったところもあったみたいだ。
わざわざ見せなくてもいいのに、と思ってしまう。
「だから、急いだんですってば。見せなくていいです。ちゃんと火は通ってますし、お腹に入れば一緒です」
「ん。腹に入れば一緒だなァ」
ニヤリと笑いながら、そのまま口に放り込む。
「だから、多少の失敗は目を瞑っていただけると助かります。私もいただきます」
手を合わせて言ったあとは、そのまま箸を手にする。
「お前らしさだもんなァ、雑なのは」
「大雑把ですみません。一応、いつもは気を付けてるんですよ」
お互い夕食を食べながら、でも、会話は続く。
「知ってる。流石に切れてない野菜が毎回入ってたら言ってるだろうがァ」
「ですよね~」
「まぁうまけりゃ、それでいい」
「はい。それに、やっぱり実弥さんと一緒にご飯食べるのはいいですね。一人だと味気なくて。しかも簡単に済ませてばかりでした」
実弥さんのいなかった時の食事は、本当に手抜きもいいところだった。
「…お前、俺のことは言えねえなァ」
実弥さんはいつもの含んだ笑いではなく、明らかに苦笑している。
「そうなんですよね。本当取りあえずお腹を満たすって感じでした。やっぱり誰かと一緒に食べるのは、大事なことですね。
改めまして、実弥さん、一緒にご飯食べてくれて…ん?いや、ここに置いてくれて、かな?取りあえず、ありがとうございます。これからもここで一緒にご飯食べさせて下さいね」
本当にそう実感する。
食事はお腹を満たすこともあるけど、栄養面や精神面の安定にも繋がる。大切な人とこうやって話ながら食べるのも、大事な事だと思う。