第19章 恋柱と蛇柱
「あー。今日の夜も出るから、風呂は明日戻ってからでいい。それよりも腹が減った」
遠くに出ていたというのに、今日の夜も鬼狩りなのか。本当にこの仕事は大変だ。若いし体力があるから続くかもしれないけど、毎晩死と隣り合わせだ。
よくよく考えたらブラック企業より、悪いかもしれない。
いやいや、取りあえずご飯を作らなきゃ。
「分かりました!取りあえず急いでご飯作りますね。あ、おはぎありますけど、先に食べますか?」
「ああ。取りあえず着替えてくる。夕飯もそんなに急がなくていい」
「は~い。おはぎもすぐ食べれますから、いつでも声かけて下さいね。脱いだ隊服はいつもの場所にお願いします。他に洗うものがあればそれも一緒にお願いします。明日洗いますので」
「あぁ。分かったァ」
「お願いします。さぁ、まずはご飯からかな。お湯も沸かして…」
結局ブツブツと呟きながら、実弥さんに背を向ける。机に置いた籠の中から買ってきた物を取り出しながら、同時に片付けていく。
おはぎは皿にのせておけばすぐに食べられる筈だ。
全て同時進行で進めていく。
お湯が沸いた頃に、実弥さんが浴衣に着替えて戻ってきた。
「あ、実弥さん。おはぎは好きなだけどうぞ。お抹茶も今から淹れますから」
実弥さんをちらっと見てから、声をかける。
「いただきます」
「どうぞ」
余程空腹だったのだろう。黙々と食べ進めている。
お抹茶を横に置けば、それもぐいぐいと飲んでしまった。
「お抹茶、おかわり淹れますね。あまり食べれなかったんですか?」
「んー。わざわざ食べようとは思わないからなァ。適当に口に入れる位か。空腹が紛れればいいからなァ」
「実弥さんらしいっちゃらしいですけど。普段しっかり食べるんですから、お腹も空きますよ。ちゃんと食べるのも仕事のうちです。実弥さんの体の為でもあるんですから。この仕事は体が第一でしょ」
「…まぁそうなんだがなァ。面倒なんだよ」
バツが悪そうに顔を背ける。けれども、おはぎは食べ続けている。そうとうお腹が空いているんだろうと思えば、笑ってしまう。
「取りあえず、夕食作りますね。おはぎでお腹を落ち着かせてください」
「あぁ」