第19章 恋柱と蛇柱
…
「ノブちゃん、今日は何かあるのかしら?」
「どうしてですか?」
「ふふ。当ててみましょうか?同居人の方が戻ってくる、かしら?」
「ええっ?何で知ってるんですか?」
「知らないわよ。だけど、当たりのようね、ノブちゃん」
「何で分かったんですか?」
「昨日とは全然違うわよ、表情が。それに、おはぎもお持ち帰りだしね」
「はぁ、華子さんには敵わないなぁ。そうです。実弥さんが戻ってくるんです。そんな顔に出る位、だったんですね。ちょっと気を引き締めないと」
「大丈夫よ。私も昨日話を聞いてなかったら、分からなかったと思うし。同居人の方のことが本当に好きなのね、ノブちゃん」
「そうですね。大好きですよ。家族みたいなものですから」
「ふふ。それだけかしら?」
「それだけですよ」
…
華子さんがすぐに分かるくらい、顔に出ていたなんて、すごく恥ずかしかった。まぁ、自分でも自覚するくらい気持ちが上がっていたから、仕方ないのかもしれない。
それだけ、実弥さんが私の中で大きな存在なのだと思い知らされる。この時代で数少ない頼れる人だ。大きな存在にならない方がおかしい。
夕方までには戻ると言っていた。もう戻っているだろうか。早く戻ってきて欲しいとは思うが、できれば屋敷で出迎えたい。
そう思えばまた更に歩みは早くなり、いつもより早く屋敷に着いた。
「ただいま戻りました~」
誰もいないと、返事はないと分かっていても、何故か言ってしまう。
扉を閉めていると、後ろから懐かしい声がした。
「今日は何を買ってきたんだァ?」
ぐるりと声のした方に向きを変えれば、ニヤリと笑った実弥さんが廊下に立っていた。