第19章 恋柱と蛇柱
そんなやり取りに蜜璃ちゃんは盛大な勘違いをする。
「二人とも仲良いわね」
「どこが?」
「どこがだ?」
二人の声重なる。
だからと言って、絶対仲良くはない。
「ほら。羨ましいわ」
クスクスと笑いながら言う。
全く伝わっていない。まあ、そこが蜜璃ちゃんの良いところと言えば、良いところなんだけど。ちゃんと訂正は入れておく。
このまま伊黒さんと仲がいいと勘違いされたままでは困る。実際は全く仲良くないのだから。
「蜜璃ちゃん、全く違うからね。仲良くないからね。ただ言い合ってるだけだからね。勘違いしないでね。全然仲良くないからね!」
「そうだ、甘露寺。だいたい、こいつとは全く性格が合わない。人の話は聞かないし、突拍子もないことばかり言う。煩いし。全く仲良くなどない」
どうも伊黒さんも同じ気持ちらしい。同じように蜜璃ちゃんに説明している。
「そこだけは気が合いますね、伊黒さん。私、散々な言われようですけど、まぁそれはもう置いときましょう。蜜璃ちゃん、私は実弥さんが好きだから、伊黒さんには興味ないからね」
「俺もお前には全く興味などない。それにしても、不死川の女の趣味だけは全く理解できない。なんでこんな奴を嫁になど…」
「嫁じゃありません!」
話の途中で条件反射のように言ってしまったが、蜜璃ちゃんももう一度説明してくれる。
「そうそう伊黒さん。ノブちゃんは、不死川さんの嫁じゃないのよ~」
「何度も言ってますけどね。まぁ、実弥さんは私みたいのは好きじゃないと思いますよ。たぶん、ほんわかとした可愛らしい人が好きなんじゃないですかね~」
カナエさんを思い浮かべながら、説明する。私とは本当に似ても似つかない。女子力なんて皆無に等しい。だっておばちゃんだ。
チクリと胸が傷んだが、こればかりは無い物ねだりだ。仕方ない。だけども、私にないものばかりで悲しいなぁと、そこまで考えたところで、伊黒さんの怒号のような声が響く。
残念。愁傷に浸る暇もなかった。
「はぁ?嫁じゃないだと!嫁と言っていただろうが」
「いえ、嫁とは言ってません。全く聞いて頂けなかったので、流石に諦めました」
「何なんだ、それは。きちんと否定しろ、否定しないお前が悪い」
いや、したよ。したけど聞かなかったじゃないか。
もう苦笑いしかでない。