第19章 恋柱と蛇柱
「いや、したんです。聞いてなかったじゃないですか!いや、もうその話は終わりにしましょう。何だか、伊黒さんとばかりお話してる気がしますし、この話を始めたら堂々巡りになりまさから」
「お前と同じ意見なのは、嫌だが、俺もそう思う」
蜜璃ちゃんを見れば、私達二人のやり取りを楽しそうに見ている。
あぁ、絶対勘違いしてる。
とっても可愛いんだけど、蜜璃ちゃんも柱だったな。
話を聞いて貰えないんだろうなぁと、肩を落とす。まぁ仕方ない。
話題を切り替え、蜜璃ちゃんに話しかける。
「蜜璃ちゃん、この後のご予定は?」
「いつも通り仕事だから帰って準備する位だけど」
「じゃ、そろそろ帰らないといけないかな?」
気づけば随分と時間が経ってしまっている。そろそろ帰らないといけないだろう。
「そうね。伊黒さんもいるしね」
「また来てくれる?」
「うん。楽しかったし、また一緒にお出掛けもしたいし」
「私も蜜璃ちゃんもお出掛けしたい!」
全く喋らない伊黒さんの視線が痛い。蜜璃ちゃんとの時間を取るなと、訴えられている気がする。
だけども、私にとって数少ない友達だ。たまにはいいだろう。視線のことは気づかないふりをして、蜜璃ちゃんと話続ける。
「ノブちゃん、約束ね。また手紙も書くわ」
「うん。私も」
そのやり取りを見ていたのか、もう待てなかったのか、伊黒さんが声を出した。
「さあ、甘露寺。長々と居座ってしまったからな。そろそろ暇乞いしよう」
そう言うと、すぐに立ち上がり部屋から出ていく。同意もなにもあったもんじゃない。
そんなに早く帰りたかったのかと思うと、笑いが出る。
「う、うん。分かった」
蜜璃ちゃんも戸惑っているのだろう。伊黒さんの後ろ姿を見ながら、バタバタと立ち上がる。
私も一緒に立ち上がる。
「蜜璃ちゃん、行こう。伊黒さんは置いていくことはないだろうけど、待ってる」