第19章 恋柱と蛇柱
「二人ともごめんなさい。変なこと言いました」
私がぼんやりと考えている間も固まり続けていた二人に、しっかりと頭を下げる。
「…ううん。大丈夫よ。ちょっと…驚いちゃったけど」
「…そうだ!お前は突拍子もないことを言い過ぎる。振り回されるこちらの身にもなれ。だいたい、自分の作ったものを勝手に結ぶように言うなど、どういう頭をしてるんだ」
二人とも、私の言葉に反応して、やっと動き出した。動きや言葉にぎこちなさが残るが、それはそれで可愛らしい。
「本当にごめんなさい。気を付けますね。でも、蜜璃ちゃんに似合ってるし、喜んでくれたんだから、今回は許してください。ね、蜜璃ちゃん」
私に対しては全く許す気配は感じられないから、ちょっと蜜璃ちゃんに助けを求める意味で、話を振る。
「私からもお願い。伊黒さんが結んでくれて…嬉しかったし」
最後の方は少しだけ声が小さくなったけど、ほんのり顔を赤らめて言う姿は、本当に可愛らしい。
「…甘露寺が言うなら、仕方ない。だが、次はないからな」
そんな蜜璃ちゃんのおかげで、許しは得た。伊黒さんは、目を丸くして顔を反らしながら言ってたけど、頬と耳が赤くなっていた。
…うん、指摘しないでおこう。
蜜璃ちゃんもだけど、よくよく見ると伊黒さんも可愛いよなぁと思ってしまう。元々の性格もあるだろうけど、彼の背景がネチネチとさせているのもあるだろう。
所々で年齢相応の反応をする彼も、やはり可愛らしく思えてくる。
そんな事をふと思いながら返事をすれば、思いの外軽くなってしまった。
「はいっ!気を付けま~す」
「その言い方、本当にそう思ってるのか?真剣さが足りない。まぁ、お前とはもう会うことはないと思うがな」
私の言い方にすぐに反応して、嬉々として言う姿は、存外面白い。
「私もそう思います。そこは気が合いますね」
だけど、私が伊黒さんにもう会うことはないだろう。話の話題にあがることはあっても…だ。
最後位はいい印象で帰ってもらわなければと、これでもかと営業スマイル全開で言う。
「ハァッ?」
お気に召さなかったようだ。