第19章 恋柱と蛇柱
話していると、あっという間だ。
台所から先に入り、急いで玄関を開ける。
「お待たせしました。どうぞ」
「ありがとう。お邪魔します」
「…邪魔する」
そのまま二人を客間に案内する。
「ちょっと二人でゆっくりしてて。私はお茶を準備してくるから」
「お茶なんて。気にしなくていいのよ」
「ううん。せっかく来てくれたんだから、お茶位は出させて。お土産のおはぎも一緒に食べよ」
「わかったわ」
「じゃ、お二人で、ごゆっくり~」
そう言い残して、台所に向かう。早速蜜璃ちゃんの声が聞こえてきた。裏表なく、誰にでも話ができる蜜璃ちゃんは、本当に夏に大輪を咲かす向日葵のようだ。
あの明るさに救われる。
台所で湯を沸かしつつ、湯呑みやおはぎを準備する。
待たせてしまってるけど、少しでも二人の時間を大切にしたいし、無理に急がずに準備していく。
湯が沸いた所で、火を消す。それから自分の部屋に行き、蜜璃ちゃんにプレゼントしようと思っていたリボンをポケットに入れ、台所へ戻る。
それから、お茶を入れて、おはぎの載ったお盆と一緒に持ち、客間へ行く。
蜜璃ちゃんの話し声が聞こえる。伊黒さんはゆっくりと相槌をうっている。いい雰囲気だなぁ。本当にそう思う。
「伊黒さん、蜜璃ちゃん、すみません。お待たせしました」
「ノブちゃん。こちらこそ、気を遣わせてしまってごめんね~」
「フンッ」
せっかくの二人の時間を邪魔された伊黒さんは、顔を背ける。分かりやすい人だ。ここまであからさまだと、逆に清々しい。
「頂いたものだけど、どうぞ。実弥さんもいないし、一緒に食べてくれると嬉しいわ」
「じゃあ、遠慮なく頂きます」
華子さんの所であれだけ食べてるけど、まだまだ余裕のようだ。