第19章 恋柱と蛇柱
「不死川さんの鴉が昨日来てね。伝言を貰ったの。ちょっと何日か屋敷を空けるから、時間があれば会いに行って欲しいって」
「えっ?」
混乱した頭に更に追い打ちをかけるような内容に、もうついていけない。
「不死川も大概過保護が過ぎる。たった何日かいないだけで。今までもあっただろうが。なぜ甘露寺に連絡するのかも分からない。だいたい、お前が…」
「だって伊黒さん、私とノブちゃんはお友達なんだから。突然だったけど、嬉しかったのよ。手紙のやり取りはしてても、なかなか会えなかったし」
実弥さんがそんなことをするなんて。
信じられなかったけど、単純に心配だったのだろう。まぁ、気持ちが落ちていたし。申し訳ないという気持ちと、嬉しい気持ちとがせめぎ合う。
本当に過保護が過ぎるとは、伊黒さんもよく言ったものだ。何日も家を空ける…こんなことはざらにあるだろうけど。
特殊な事情もあることだし、そう言うことも含めて、蜜璃ちゃんにお願いしたのだろう。
伊黒さんはおまけになるとは思ってなかっただろうけど。
「本当に驚いたけど、私は蜜璃ちゃんに会えて嬉しい。まだ時間はあるの?良かったら寄っていって。渡したいと思ってた物があるの」
「伊黒さん、行ってもいいかしら?」
「…甘露寺が望むなら」
「ありがとう、伊黒さん。今度は何かしら?楽しみ。この間貰ったリボンも可愛かったし」
「気に入って貰えるかは分からないけど。じゃあ、行こっか。伊黒さんもありがとうございます。もう少しだけ私にもお付き合いくださいね」
「フン」
私への返事は素っ気なかった。
多分、いや間違いなく、嫌なんだろうなと思う。本当は行きたくなくて、蜜璃ちゃんと二人だけが良かったのだろうけど。そこはやっぱり好きな人のため。
そう思うと、ちょっとひねくれてて、ネチネチ言うけど、伊黒さんも優しい人なんだなと思う。
「じゃ、不死川邸に出発しましょう。華子さん、ごちそうさまでした~」
そう声をかけ、お持ち帰りのおはぎを受け取り、店をあとにする。
蜜璃ちゃんと並んで歩き、ひたすら話をする。伊黒さんは私達の後ろからついて来てくれる。時折蜜璃ちゃんが振り返って話をすると、ちゃんと答えてくれるから、私達の話をきいているのだろう。
本当、蜜璃ちゃんに対しては、本当に優しい人だ。