第19章 恋柱と蛇柱
「伊黒さんは蜜璃ちゃんに対して、私みたいな話し方はすぐにはできないだろうけど。でも、私は蜜璃ちゃんと伊黒さんの雰囲気の方が好きよ。ほんわかとしてて、温かくて、癒されるのよ。
それぞれでいいと思うわ。それに、蜜璃ちゃんも伊黒さんに聞きたいこととか話したいこととかあったら、遠慮せずに一杯話していいと思うよ。ね、伊黒さん」
「…」
なぜか、伊黒さんが鳩が豆鉄砲を食ったような、そんな驚いた表情をしている。何とか話を反らしているのだから、話を合わせてもらわないと。
「ねっ!そうよね、伊黒さんッ!」
少しだけ強めに、そして強調して名前を呼ぶ。
「あ、ああ。甘露寺ならいつでも遠慮はいらない」
始めは私の意図したものが全く伝わっていなかったけど、流石に気づいてくれたようだ。
これで蜜璃ちゃんに勘違いされたままにだったら、私は伊黒さんにものすごーくネチネチネチネチと言われ続けるだろう。
間違いない。今日のこのちょっとの時間でもネチネチ言われたんだし。
実際自分に向けられると、結構胃にくる。これ以上のネチネチは遠慮したい。
「ほら、伊黒さんもそう言ってるから遠慮しないでね。そしたら、伊黒さんともっと仲良くなれるよ」
掩護射撃ではないが、伊黒さんと仲良くなってもらうために声をかける。
「ふふ。ありがとう、ノブちゃん、伊黒さん」
「さぁ、残りを食べちゃおう」
「そうね。本当においしいから、すぐになくなっちゃうわ」
そう言いながら、本当になくなっていくので、見ているこっちまで気持ちよくなる。
「「ごちそうさまでした」」
同じタイミングだった。私が一個のおはぎを食べる間に、蜜璃ちゃんも完食だ。本当に驚いてしまう。こんなに細いのにどこに入っていくのだろう。
「そう言えば、今日は二人ともお休み…な訳ないか。隊服だもんね」
二人でお出掛けなら、伊黒さんはともかく、蜜璃ちゃんは私服だろう。
「伊黒さんが誘ってくれて、お昼ご飯一緒に食べてきたの」
「そっか。それで、そのあとの甘いもので、ここ?」
「食べに来たというより、ノブちゃんにお土産を買いにね」
「えっ?何で私?」
まさか自分に?何も聞いていない。
「ノブちゃんに会いに行くところだったのよ」
「ええ?突然どうしたの?」
頭の中はクエスチョンマークがいっぱいだ。