第19章 恋柱と蛇柱
そんな事を思いながらも、お風呂の準備も慣れたもので、すぐにできる。
「成長したな、私」
最初の頃と比べると、本当にこの世界に馴染めているなぁと思う。
「最初は本当散々だったなぁ」
実弥さんと初めて会った日のことを思い出せば、笑いが込み上げる。浴衣すらまともに着れなくて、実弥さんの手を煩わせたのは、本当に懐かしい思い出だ。まぁ、黒歴史かもしれないけど。
お風呂から上がれば、もう暗くなりかけていた。急いで藤のお香を焚き、身支度を整える。
晩御飯はもうご飯と味噌汁だけだ。一人だし、簡単に済ます。
「私、実弥さんがいなかったら、ずっとご飯と味噌汁だけかも…」
片付けをしながら、ふと呟く。ご飯も味噌汁も好きだから、この二つで大丈夫だ。
「実弥さん、ちゃんとご飯食べてるかなぁ」
自分のことは棚に上げ、実弥さんの心配をする。実弥さんは自分のことは後回しにしてしまうから、ご飯も取りあえず詰め込むだけになってそうだ。もしかしたら食べてないかもしれない。
そんな姿が想像できて、くすりと笑う。
でも、そんな実弥さんなのに、おはぎは別。
本当に大好きで、毎日食べちゃうところが、可愛いらしいのだ。
食事はそんなにでもないのに、おやつの時間はきっちり取る。
放っておいたら、三食おはぎでもいいんじゃないかとも思える。
「可愛いよなぁ」
片付けと、簡単に明日の朝食の準備をしながら、つぶやく。こんなことを考えていれば、今頃実弥さんはくしゃみでもしているかもしれない。
部屋へと戻り、布団を敷く。
1日が長かったような気もするし、短かったような気もする。布団に横になれば、睡魔が襲ってくる。どうやら、今日は1日がんばっていたようだ。目蓋は重く、少し抵抗したけれど、その思いとは裏腹に落ちてきてしまう。
実弥さんは目的の場所にたどり着き、任務についている頃だろうか。怪我していないだろうか。
そんな事を考えていたが、意識はすぐに飛び、夢の中へ落ちていった。