第19章 恋柱と蛇柱
洗濯を終わらせ、屋敷内の掃除をしていれば、すぐに太陽は真上に上がる。
きりの良いところで掃除をやめる。
台所の机に座り、作っていたお握りを頬張る。ほどよい塩気がじんわりと口の中に広がる。
「あー美味しい」
現代と比べると、本当に質素なものばかりだけれど、素材の味がしっかりと感じられて、これはこれで美味しくて満足している。
たまに洋食が食べたくなるけど、天婦羅を食べればそれで満足できる。
それに隣町に行けば食べられるというのが分かっているから、意外と大丈夫なのだ。
元々年齢的にも脂っこいものや味の濃いものは、あまり受け付けなかったのもあるかもしれない。体は変わっていても、好みはそのままなのだろう。
「はぁっ。やっぱりお味噌汁、美味しい」
何だかんだで、具沢山のお味噌汁が一番好きだ。
しっかりとお腹に入れば、また昼からもがんばれる。
片付けた後は、一度洗濯物の乾き具合を確認するため、庭へ出る。
比較的乾きやすいものばかりなので、今日中に乾きそうだ。
「隊服はどうかな~。うーん。こっちはもう少しだな」
相変わらず、独り言を呟きながら、作業を進めていく。昼からも日がよく当たる場所に移動させる。
「よし。これで大丈夫」
それから、道場の掃除をする。
いつも実弥さんが掃除してくれているので、目立った汚れとかはない。
全体的に掃除をして、床は雑巾で拭く。
その後は道具入れの整理をしながら、細かい部分の掃除をしていく。実弥さんはきちんとした性格なようで、道具等も整えて置かれている。一つ一つ出していく。
「すごいなぁ」
大雑把な私とは大違いだ。
分かっているけど、私なりに丁寧に掃除していく。隅の方や奥の方等、細かい部分の埃を集め、拭きあげる。それが終われば、元通りに道具をしまう。
これで終了だ。
雑巾や桶を洗いに外に出れば、随分と日が傾いている。お昼からも掃除をしていれば、それで今日は1日が終わったようだ。
「夜も簡単なものでいいや~。お風呂も早く入らないと。急がないと暗くなるなぁ」
ブツブツと呟きながら、手や体は動かして片付けと、その足で風呂の準備をする。
水を入れ、火を起こす。言葉にすると簡単だが、かなりの重労働だ。ボタン一つで風呂に入れたのは、ありがたかったのだと、つくづく思う。