第19章 恋柱と蛇柱
「んで、本当の所は何だァ?」
食べる手を止め、何かを探るかのようにじっと見られている。
「…本当の所…いや、怪我の心配は本当ですよ」
「でも、それ以外も何か考えてるだろォ」
強い視線が突き刺さる。私がのらりくらりとかわそうとしても、聞き流しはしないだろう。
「…ちょっとあんまり言うのは恥ずかしいんですよ。言わなきゃ駄目ですかね?」
「ノブの情けない姿なんて何度も見てんだァ。何でも話せェ。俺は明日からいねえんだぞ」
有無言わせない。そんな雰囲気だ。
「…そうですね。実弥さんの前では情けない姿ばっかり見せてますもんね。今更か。
正直に言うとですね、何度も言ってる気もするんですけど。
今の生活は夢のようなんです。本当に夢じゃないかと思う位。
だから、実弥さんがいない間に目が覚めちゃいそうで。ここにも突然来てしまったから、突然戻ってしまいそうで。それが不安で」
「んなこと、考えてんのかよ」
呆れ顔で眺められる。
「いや、実弥さんにとってはそんなことかも知れませんけど。私にとっては結構重要なんです。それに、私もそんなことはないとは思ってるんですよ。でも夢なのは本当だから。夢はいつか覚めてしまうものだし……って、痛いです!実弥さんッ。痛いですって!」
話している途中で、実弥さんの腕が伸びてきたと思ったら、思いっきり頬をつねられた。
「痛いだろうがァ!夢じゃねえ。現実だ!ノブ、お前はここにいる。だから、安心しろォ。だいたいお前は、馬鹿なのに、考えすぎる所があるからなァ」
頬をつねっていた手は離されたが、そのまま軽くデコピンされる。
実弥さんにとってはごくごく軽い力だろうけど、頬も額も痛い。
「…実弥さんは、考えなさすぎですけどね」
頬を擦りながら、少しだけ嫌味を口にする。
「なんだとォッ!」
思った通りの反応に、笑ってしまう。
ちゃんと伝えなければ。嫌味だけの、意味ではないことを。
「だから、実弥さんの言葉って、すごく響くんですよ。ありがとうございます!
うん、私、ここにちゃんといますよね」
最後は自分に言い聞かせるように呟く。
それに気づいたのか、実弥さんの優しい声が響く。