第19章 恋柱と蛇柱
「おいッ!ノブッ!聞いてるのかッ!」
突然の怒鳴り声でふと我に返る。
周りを見渡せば、目の前には実弥さんが怪訝そうな顔で見ていた。
私は夕食中だったにも関わらず、どうも意識が飛んでいたようだ。
「大丈夫かァ」
「大丈夫です。ちょっとぼーっとしてました」
思考を停止させた影響か、あまり考えないようにと、考えた結果、思考どころか体の機能まで止まっていたようだ。
そこは敢えて言わないが。
「ぼんやりしてるのはいつもだろうがァ」
実弥さんを見れば、いつの間にかニヤニヤとしながらこっちを見ていた。
「そうですね…って、いつもはそんなにぼんやりしてませんって!」
からかわれているのが分かったので、ノリツッコミを入れてみる。
「いつも通りだなァ」
実弥さんの表情が柔らかいものに、変わる。
私のことを思って言ってくれていたのだと、理解する。
「…すみません。心配おかけしました」
「そんなにボケッとしてたら、明日からどうすんだァ」
眉間に皺を寄せて言う姿は、どう見ても心配させているとしか思えない。
自分のことで時間を割いてしまった。何をやっているんだろう。
「はい。大丈夫です。本当にごめんなさい」
「…そんなに一人は、心配かァ」
箸を置き、頬杖をつきながら、聞かれる。
「うーん。それも心配と言えば心配なんですけど。まぁ、夜は今までと同じですし。元々、私はこの世界ではずっと一人ですし、そこは大丈夫です」
「じゃあ、何が心配なんだァ」
訝しげな表情で尋ねられる。
「……実弥さんが、怪我しないか…です」
しどろもどろで答える
目を丸くして
「ハァ?」
「毎日帰ってくるんだったら、朝にでも手当てできるんですけど。いや、そもそも実弥さん、強そうだから、怪我しないでしょうし。したとしても、誰か専門的に手当てしてくれる人もいるんでしょうから、大丈夫なんでしょうけど」