第19章 恋柱と蛇柱
「おい、どうしたァ」
私のおかしな行動が気になったのか、不審そうに尋ねられる。その顔が自分の想像とそぐわず、堪らず声が漏れる。
「クッ!ハハハハッ!はぁ。可笑しすぎますよ」
我慢できずに、笑いだしてしまった。
「はぁ?何がだァ」
「今の会話ですよ。実弥さん。気になりません?
さっきの会話、どう考えても夫婦の会話でしたよ。それに気づいたら、もう可笑しくて可笑しくて。
私だけしか気づいてなかったから、そのまま流そうと思ったのに。可笑しすぎて。頑張ってたのに、実弥さんが聞いてくるから、結局流しきれなかったじゃないですか~。可笑しいでしょ?」
「……そう…だな」
私の怒涛の話に理解が追い付いていないのか、返事は曖昧だ。実弥さんが理解してなかろうと、私は随分と楽しんだので、満足だ。
「あーもう。お腹いっぱいです。久しぶりに、こんな涙流すまで笑いましたよ」
「…お前の笑いのツボが分からねェ」
困惑したような表情の実弥さんは、おはぎを食べるのも止まる程、理解できないようだったようだ。
「そうですか?まぁ、楽しかったからいいです。そしたら、今日は夜ご飯は一緒に食べれますね」
「あぁ」
「いつも通り準備しますね。あと、この後少しお部屋にも入らせて貰いますね。着替えの準備するので」
「頼む」
そんな会話をしていれば、すぐにおはぎはなくなってしまう。華子さんのところのおはぎは本当に美味しい。
お皿と湯呑みを片付けた後、実弥さんの部屋に向かう。
「実弥さん、明日の準備をしたいので、お部屋に入ってもいいでしょうか?」
襖の前で声をかけると、すぐに返事が返ってくる。
「入れェ」
「失礼しま~す」
そう言い襖を開け、中に入る。
最近では衣類の場所も把握し、箪笥に片付けるまでしているので、実弥さんの部屋に入る事も多くなっていた。
実弥さんも慣れたもので、机に向かったままだったり、横になっていたりと、その時々で違うが、構える事なく受け入れてくれている。