第19章 恋柱と蛇柱
毎日が過ぎるのは早い。
蜜璃ちゃんとお出かけして、悲鳴嶼さんと玄弥くんに会いに行って、天元さんが呑みに来た。
日々の生活を過ごす感じだったのが、立て続けに行事というか、イベントというか、非日常が続いた。
天元さんが来た日以降、欲を出す手伝いをしたり、一緒に寝たことはない。
特に何もなく、日々が過ぎていき、季節は残暑を迎えようとしていた。
「実弥さん、休憩しましょう」
「あぁ。着替えてくる」
実弥さんとの関係も最初とは少しずつ変わってきた。
あれから、実弥さんは部屋で休憩する前に、台所にお茶を飲みに来ることが増えた。椅子に座って一緒に話をしたり、ただお茶を飲んでいたりと、その時々で違うのだけど。
それに伴って、お昼の稽古が終わって、一緒に休憩を取ることが増えていた。
私も部屋で休憩する事が多かったのだけど、現代人としては慣れた椅子が良かったり、わざわざ部屋まで戻るのも億劫ということもあり、台所は私のパーソナルスペース状態となっていた。
そこでちょこちょこと座って休憩していれば、実弥さんも顔を出すようになり、今ではほぼ毎日一緒にお昼の休憩(所謂おやつタイム)を過ごすようになっていた。
もちろん、お茶請けはおはぎだ。
何だかんだで、実弥さんとの同居生活も楽しく過ごせている。
同居人だけど、二人だけの秘密も共有しているし、少しだけ、近い関係性になったような気がしている。
今まで全く見ることのなかった、少しだけぼんやりとしている姿を見ると、少しは心を開いてくれてるのかなと思えるのだ。
おはぎを食べていると、実弥さんがふと思い出したように話し出した。
「さっき鴉から指令がきて、明日から少し遠くの場所に行くことになった。二、三日は戻れねぇ」
「そうなんですね。じゃあ着替えとか準備しておきましょうね」
「あぁ、頼む」
「今日の夜もお仕事ですか?」
「あ、いや。今日はない。明日、早朝から出発するからなァ」
「大変ですね。こちらは気になさらず、お仕事頑張ってきて下さいね」
「あぁ。さっさと終わらせてくる」
何だか、夫婦みたいな会話に笑いが込み上げてきた。顔を反らして笑いを堪えていたけど、止めようと思えば思う程、とまらなくなる。