第18章 休日と音柱 *
「…ふふふ」
急に笑いが込み上げてきた。
「どうしたァ。気でも触れたかァ」
「いや、この状況に笑いが込み上げてきまして。こうやって座ってると、初夜明けみたいじゃないですか?そう思ったら笑えてきて」
「初夜ッ?!」
少しだけ大きな声で、驚いたような顔をしている。
初夜という単語に物凄く反応する実弥さんは、やはり色恋の経験はあまりなさそうだ。
言葉だけでこれだけ反応するなんて、気まずい雰囲気だったのは、実弥さんも一緒だったのかもしれない、と勝手に思い至る。
「まあ、ある意味初夜ですよね。一緒に寝た初めての夜。言葉にすると、更に面白すぎですね。いや、もうこの状況がおかしすぎですよね。ふふふ。もう笑いを抑えきれません」
おかしすぎて涙まで出てきた。
「はぁ。実弥さん、昨日はお互いおかしかったですね。でも、私は気持ちよく寝れましたし。実弥さんは寝れました?余計に疲れたりしてません?」
「…ハァッ。お前はやっぱり変わってるよ。昨日の事をこうまで笑い飛ばすなんざァ」
「だってただの同居人同士なのに、こんなおかしなことになってるんですよ。いや、お酒の力って怖いですね」
「いや、ノブ、お前は呑んでねぇだろォ」
呆れた顔で、実弥さんから突っ込まれる。
「そうでした。んーまぁ酔ってたようなもんですね。ところでさっきの答えは?ちゃんと実弥さんも寝れました?疲れたりしてません?腕は大丈夫です?頭ずっとのせてましたよね、すみません」
利き腕ではなかったとしても、刀を振るうのに私の頭がのってたせいで、支障が出ては本当に謝罪だけでは済まないのだ。
そう思い当たり、頭を下げる。
「腕も大丈夫だし、ちゃんと寝れたから大丈夫だァ。お前は…聞くまでもねえねァ」
ニヤリと悪戯っぽく言われるが、本当の事なので、反論の余地もない。
「そうですね。寝れないと言ってましたけど、結局先に寝ちゃいましたしね」
「よくあんな状態で寝れるよなァ」
「それを言うなら実弥さんもです」
「…それもそうだなァ」
「ふふふ」
「ハハッ」
先程までの気まずさはどこへ行ったのか。二人で顔を見合わせて笑い合う。