第18章 休日と音柱 *
【実弥side】
ノブの背中が規則的に上下に動く。
目が覚めていてもう起きると言っていたが、横になってそんなにたたないうちに、もう寝たようだ。
少しは緊張でもするのかと思ったが、やっぱりノブはノブだった。隠の背中でも寝たようだから、こいつはどこでも寝れるのだろう。
ここに来てからも、あまり寝れないようなことはなさそうだった。
神経が図太いというのか、鈍感なのか。
さっきまで俺のモノを咥えたり、口づけしたりと、男女の関係のようなことをしていたのにだ。
少しは警戒していたようだが。
これじゃあ何をされても文句は言えねえよな。
ノブは本当に無防備過ぎる。
男を信用し過ぎなのと、自分の事を低く評価し過ぎだ。記憶は四十だから仕方ないのかもしれないが、それにしてもだ。女としてこれでいいのか、と心配になる。
そこで、ふと我にかえる。
何で俺がノブの心配をしてんだァ。
頭を二度程つついてみるが、全く起きる気配はない。
何で一緒に寝るなんて言ったんだァ、俺は。本当に今日は自分が自分じゃねェ。酒には強い方だ。今日も酔った感覚はない。
だけど、いつもの俺とは違う。
そもそも、こんな状況になることが、おかしい。
やっぱり酒のせいなんだろう。それしか説明がつかねえ。
自問自答を繰り返すが、結局明確な答えはない。
もういい。
考えることを放棄する。
ゆっくりとノブの頭を少し上げ、首の下に腕を潜り込ませる。
体を近づけ、後ろから抱き締める状態になる。
「温けェ」
酔った時は人の温もりが恋しくなる、と言っていたが、そうなんだろう。こんな風に誰かと寝たのは、弟妹だったかもしれない。
遊郭に行った時でさえ、仮眠程度で、遊女とは背中合わせだった。
なのにだ。
自分から一緒に寝る、と口から出ていた。
ノブも驚いていたが、俺自身も驚いた。
今日の俺はおかしい。