第18章 休日と音柱 *
再度提案するけど、無言のままだ。
流石にどうしたらいいか分からず、少しだけ苛つき口調が投げ槍になる。
「えっと、どうしたらいいか教えて貰わないと、私どうしようもないんですけど。じゃあ、もう起きていいですよね、実弥さん」
「…お前が背中を向けろォ」
少しだけ間があったが、やっと答えてくれた。だけど、起きるという選択肢はなかったようだ。
言われたからには、しないわけにはいかないだろう。
ゆっくりと体をずらし、実弥さんに背を向けた状態になる。こっちの方が、実弥さんを意識しないでいい。
「じゃあ、おやすみなさい」
「あぁ…」
そうは言ったものの、目が覚めてしまっているから、なかなか寝れるもんじゃない。くっついている訳でもないけど、すぐ近くに実弥さんがいるのは分かる。
冷静になってしまえば、この状況に、心臓がバクバクするし、顔はまた熱くなる。
おかしい。おかし過ぎる。
いくら酔ってるとはいえ、一緒に寝るなんて。
私の中の実弥さんのイメージとはかけ離れている。
それに、酔ってるとは言うけど、そんなに酔っている印象は受けない。だけど、こんなに正直なのは、お酒の影響なのだろう。
だけど、年頃の男女がただ一緒に寝るって…どういう状況だよ。そう自分で突っ込んでみるけど、これが男女の行為なんてされようものなら、頭がパニックになって爆発してしまいそうだ。
何だかよく分からないけど、実弥さんがこの状況を求めてくれたのが、私で良かったと思う。誰かと…と考えるだけで、胸が締め付けられてしまう。
実弥さんの幸せの為には、そう考えてはいけないのだけど…
だけど
私がこの世界にいる間…
いや、実弥さんが玄弥くんと仲直りできる日まででいい。
少しだけ、この関係を、
同居人だけでない、でも男女の仲でもない。
何とも表現のしようのない、このすぐに壊れてしまう関係を、
この少しだけ甘い関係を、
もう少しだけ、
もう少しだけ、続けてもいいだろうか。
もう少しだけ、夢を見ててもいいだろうか。
欲張り過ぎだろうか。
この世界に来て、実弥さんに逢えただけで、それだけで満足だった筈なのに。
それ以上を求めている私は、
やはりどこかで罰を受けなければ、
こんな想いを抱くことすら、烏滸がましいと、もう一人の自分が警告してくる。
少しでも長い時間、実弥さんの傍にいたいのに…