第18章 休日と音柱 *
「…そうですよ。ただの居候です。でも、私にとって、実弥さんは、一緒に住んでる家族のようなものでもあるんです。
…この世界に私の事を知っている人は誰もいない。繋がりがないんです。
だから、ただの居候だとしても、一緒に生活している実弥さんは私にはとって、とても特別なんです。この世界で、私を拾ってくれたのも実弥さんだし、生きていけるようにしてくれたのも実弥さんだし。
この世界に来て一番に私を救ってくれた人なんですよ。だから、私のできることを何でもしたいと思うし、実弥さんにも幸せになって欲しいと思うんです。
実弥さんにとっては、迷惑な話かもしれませんけど」
この世界に私自身と繋がる人はいない。だからこそ実弥さんは私にとって特別なのだ。
「…家族…か」
何か考えているのか、ポツリと呟く。
今まで避けてきたけど、意を決して聞いてみる。
「…実弥さんの家族は?」
「俺に家族はいない」
即答だった。玄弥くんはいる。だけど、そう言わないのは、実弥さんの覚悟なのだろう。玄弥くんのために、自分自身が犠牲になることを、犠牲になっているとも思わずにするのだ。
玄弥くんに嫌われようとも疎まれようとも。いつからなのだろう。そう決断して一人で生きていくことは容易ではない。だけど、実弥さんはそれを難なくこなす。
苦でも何ともないと。
だけど、それじゃあ実弥さんも玄弥くんも本当の意味での幸せではないと思う。
でも、それを言える立場にない。
「そう…なんですね……じゃあ、私と一緒…ですね」
何とか言葉を紡ぐ。
「一緒?」
眉間に皺を寄せて聞き返される。
「私もこの世界に家族はいませんし。ごめんなさい。変なことを聞いて。さぁ、寝るなら寝ましょう。このままだと、ずっとお喋りしちゃいそうですから」
これ以上話すと、今の気持ちが出てしまいそうになる。
「ノブはよく喋るからなァ。一人でもなァ」
「言わないでくださいよ。実弥さんとお出かけしたいから、気をつけてるんですよ!」
「それにしちゃ、よく聞くがなァ」
ニヤリと笑われる。これ、絶対連れてって貰えない気がする。