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【鬼滅の刃】あなたに逢いに 

第18章 休日と音柱 *


「嫌なことならちゃんと嫌って言いますから。実弥さんは実弥さんのしたいようにしてくださいね。今日みたいに我が儘も言っていいんですよ」

「…我が儘」

少しだけキョトンとした表情で、呟く。なぜそんなことを言われるのか、分からないようだ。まぁ、話の脈絡もなく、突然言われれば、そんな表情にもなるかもしれない。

「そう。実弥さんって、正直なんですけど、どこか自分の事って後回しな感じがするので。私ができることはお手伝いしますから。たまには我が儘も言ってくださいね」

「後回し、か。でも、俺はそれでいい」

理解はしてくれたようだけど、実弥さんの根本的な考え方はそうすぐには変わらないだろう。

「ダメですよ。ちゃんと実弥さん自身も幸せにならなきゃ。誰かのために、自分が犠牲になっちゃダメです。一緒に幸せにならなきゃ」

「俺はいい」

とうとう、体を仰向けにして天井をじっと睨んでいる。

「でも実弥さん。そういう考えもあるんです。私はそう。だから、実弥さんには幸せになって欲しいんです。すぐじゃなくても、大きな幸せじゃなくても。
日々の生活の中のちょっとした時でいいんです。幸せだと思える瞬間が毎日少しでもあれば。そして、それを共有できる誰ががいてくれたら、もっといいですけどね」

「俺には必要ない」

頑なに拒否する姿は、母親や玄弥くんへの贖罪もあるのだろうか。だけど、実弥さんの人生は誰のものでもない。実弥さんのものだ。お母さんや亡くなった弟妹、玄弥くんのためにも、というのは分かるが、実弥さんのために時間を使って欲しい。

「そんなこと言わずに。私はそんな風に思ってるんです。だから、実弥さんにも幸せだと思える瞬間が少しでも増えて欲しいんですよ。だから、私はがんばりますよ」

「…お前は、何でそんなに俺に構う?ただの居候だろう」

ただの居候…
そうなんだ。私と実弥さんとの関係は居候。それ以上でも、それ以下でもない。
当たり前の言葉だ…。でも、その言葉が突き刺さる。




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