第5章 蟲柱と水柱
「お嬢さん、立ってください。でも、不死川さんのいう通り、公衆の面前で連呼するのはあまり感心いたしません。少しは恥じらいましょうね」
有無を言わせぬ笑顔が怖い。これがしのぶさんだ。
「うぅ。すみません。今後、気を付けます…」
しのぶさんは笑顔で続ける。
「ところで、お嬢さんは不死川さんの恋人ですか?」
「んな訳ねぇだろォ!」
「では、お嫁さん?」
おぉ、盛大な勘違いをされている!誤解を解かねば、実弥さんが気の毒だ!
「嫁でもねェッ!」
「ではどういうご関係ですか?隊士でもないのに、不死川さんが一般の方を連れてお館さまのお屋敷にいらっしゃるのですから」
「お前には関係ねェだろォ」
「私は嫁でも恋人でもないです!ただ昨日実弥さんと一晩過ごしただけの仲なんですッ!!」
「!!!!」
実弥さんとしのぶさんの顔がひきつる。
何かちょっと説明がおかしかった…気がする。
「そうか、不死川は昨日その女といっしょに一晩を過ごしたのだな…」
ボソッと呟く義勇さんに実弥さんが叫ぶ。
「冨岡ァ、俺はあいつと一緒に一晩過ごしてねェぞッ!おい、お前は誤解を与える説明をするなァッッ!!」
「すみませんッ!すみませんッッ!!」
これでもかと何度も腰を折って実弥さんに謝る。
顔を上げると、誤解の解けていない義勇さんに、キレながら何度も説明する実弥さん。それを横から笑顔で見守るしのぶさん。
自分の想像していた通りの三人だ。こういう場面を見ると、年相応だなぁと感慨深くなる。
こういった何気ない日常を、過ごして欲しい。実弥さんだけでなく、他の柱や隊士のみんなにも。
鬼狩りをしていなければ、青春を謳歌して、自分の夢や恋や仕事やなんかに、時間を過ごしていい年齢だ。
「嬉しそうですね」
ふとしのぶさんから声かかかる。
「はい。三人がとても仲良しだから、嬉しくって」
「仲良し…ですか」
「それに、冨岡さんに一生懸命説明してるのに、全く通じなくて焦って怒鳴り散らす実弥さん。かわいいと思いませんか?」
「不死川さんがかわいい?!私にはそうは見えませんけどね。やはり少し変わった視点をお持ちの方のようですね。」