第5章 蟲柱と水柱
お屋敷から出たところで立ち止まり、空を見上げたまま動かなくなった私に、思い出したように実弥さんが声を荒げる。
「ったく、お前はお館さまの前だってのに、あんなことよく言えたなァ。本当、失礼にも程があるぞ!」
「いや~、ずっと疑問だったんですよ!今の時代はみんなどうしてるんだろうって。あまねさまとお話しできて本当良かったです~。それに実弥さん、乳バンドしてたら昨日みたいなことがあっても、大丈夫でじゃないですか」
「あんなことが何度もあってたまるかァッ!」
「この時代に乳バンドがあるなんて、本当びっくりしたんですよ!思ってたよりかわいいし。実弥さん、見たことありますか?見てくださいよー」
その場に座り、風呂敷を開けようとしたところで、頭を叩かれる。
「バカじゃねぇかッッ!こんなとこで風呂敷広げるんじゃねェ!」
実弥さんの声が響き渡り、条件反射でその場に正座する。怒らせてしまった。
「それ以前にだ!それは人に見せるもんじゃねェッッ!!」
「…すみませんでした」
正座したまま、頭を垂れる。
そうでした。実弥さんは男の子でした。女の下着をこんな所で見せられても困るよね。
「少しは恥じらいはないのかァ」
「…すみません。ないようです……」
「…オィッッ!!」
もう四十にもなれば、若い女の子のような恥じらいは、どこかへ行ってますよ、実弥さん。
「あらあら、女の子に対して、そんな怒り方をしてはダメですよ、不死川さん」
かわいらしい声がする。
もしかして、と顔を上げると、そこには胡蝶しのぶと冨岡義勇が立っていた。