第18章 休日と音柱 *
「じゃ、寝るぞォ」
「はいっ?」
「夜明けまであと少しある」
「いやいや、私はもう目が覚めたので、起きときます。お部屋にお布団敷いてきましょうか?」
ゆっくりと実弥さんの手を離す。
「このまま寝る。動きたくねぇ」
「じゃあ、どうぞ。ゆっくり休んでもらって構いませんから」
「いや、お前もだ」
「はいっ?いやいや、私は起きますから。実弥さんは気にしないでゆっくりしてくださいッ!ねっ!」
そう言い、立ち上がろうとすると、手首を掴まれ、引っ張られる。バランスを崩し、実弥さんの胸に飛び込んだ状態になってしまった。
「!!!すみませんッ!」
「ガタガタ言わずに、寝るぞォ」
腕を掴んでいた実弥さんの手は、気づけば背中へと回され、抱き締められたような状態だ。
顔が一気に熱くなる。そして口から飛び出すんじゃないかと思う位、心臓がドクドクと速く打つ。
これだけ密着していれば、聞こえているんじゃないだろうか。そう思うと、ますます顔が熱くなる。
「分かりました。寝ますから、手を緩めてもらえます?流石にこのままじゃ寝れません…」
そう言えば、拘束していた手は緩められ、動けるようになる。
すぐに実弥さんから離れ、実弥さんと向かい合わせになるように、体を横たわらせる。
顔と顔の距離は30cm程度だ。離れたとはいえ、かなり近い。いつもと調子が違って、振り回されている感が否めない。
「はぁ。何だか今日の実弥さんは、いつもの実弥さんじゃないです。随分と酔ってますよね?」
「ノブがそう感じるんなら、酔ってるんだろうなァ」
いつもと違うといえば、飲んだか飲んでないかだ。休日というだけじゃ、実弥さんはこんなに変わることはないだろう。
「間違いないですよ。まずこんな状態で話してるとか、いつもの実弥さんなら絶対有り得ませんから」
「…そうだろうなァ」
実弥さんにも自覚はあるのだろう。少しだけ気まずそうに顔を反らした。
「まぁ、酔った時は人肌恋しくなりますし、誰かに甘えたくなりますし。いいんじゃないですか。話題を振った張本人ですけど、気にしなくていいんじゃないですか」
「何だァ、それはァ」
流石に私の勝手な言い分に、軽くおでこをつつかれる。
仕方ないのだ。
これ以上理由を考えても、この状況が変わることはないのだから。