第4章 お館さま
そんな話がされているとは露知らず、あまね様と話をしながら戻ってきた。
「おやおや、二人はもう仲良くなったみたいだね」
「はい。あまねさまがとても良くしてくださって。色々と聞かせてもらっていました!疑問だった下着のことも詳しく教えてくれましたし。あと、乳バンドもらったんです~」
「オィッッ!!」
「実弥さん、すごいんですよ!私初めて見たんです!後で実弥さんも見てください!」
「人に見せるものじゃあないだろォッッ!!見るかァッッ!」
「そうですか?かわいいのに…」
この興奮を一緒に分かち合いたいのに、連れない人だ。
「ふふふふ。おもしろいね、ノブは。喜んでもらえたようで良かった。また何かあったら、いつでも頼っていいからね」
「お館さま、あまねさま、何から何まで、本当にありがとうございます」
「実弥、よろしく頼むね」
「承知致しました。では、お館さま、あまねさま、失礼いたします」
お二人に対して深々と頭を下げ、部屋を後にする。
お館さまと話したことで靄がかかっていたこの世界での自分の立ち位置が、はっきりとした。
無惨に利用されてたまるか!
絶対にだ!
私が見ていたのは本の中の世界だったけど、その内容が変わってしまえば、実際の世界にも影響があるかもしれない。
でも、何も変わらないかもしれない。
それでも、今この世界が私にとって現実だ。
私がいた世界と繋がっていようといまいと、ここでみんなは生きている。
それに、目の前にいるこの不死川実弥という人を守りたい。不器用で愚直で優しい彼だからこそ、幸せになって欲しい。
鬼のいなくなった世界はもちろんのこと、鬼狩りをしている今もだ。心安らかに過ごして欲しい。例えそれが短い時間だとしても…。
この世界を私が知っている結末に繋げるためにも、私は私のできることをしないといけない。何ができるか具体的には分からないが、まずは日々の生活を一生懸命に過ごしていこう。
空を見上げれば、青空だった空はいつの間にかきれいな夕焼けになっていた。
それは、私を応援してくれているようでとても気持ちがよく、靄が晴れた自分の心を現しているようでもあった。