第18章 休日と音柱 *
「そうなんですね。天元さん以外にも実弥さんの事を気にしてくださる方がいたようで、安心しました。でも、実弥さんを遊郭に連れて行くなんて、結構強引な方ですね」
「…あぁ。あいつには振り回されてたなァ」
少しだけ遠くを見て、懐かしそうに微笑む。匡近さんの事を思っているのだろう。
「兄弟子さん、実弥さんの事が放っておけなかったんでしょうね。そんな所にも連れてってくれる位ですし」
「そうかもしれねぇな」
「優しい方だし、実弥さんの事をよく理解してくれてる、素敵な兄弟子さんですね」
「あぁ」
そこで、ふと思い立つ。
「そんな所に連れていかれるってことは、実弥さんは、恋仲になった方はいないんですか?」
「必要ないからなァ」
今はどう見ても女の影はない。
昔の事は知らないけど、実弥さんの性格からすればそうなのだろう。
「だから連れて行かれたと。男なら一度は経験しとけ、とか、男になれみたいな感じですか?」
そんなことを言われながら、無理やり引っ張られていく二人の姿は、すぐに想像でき、クスクスと笑いが込み上げる。
「…まあ、そうだァ」
バツの悪そうな表情で、顔を反らす。
二人の様子も気になるところだけど。やっぱり遊郭が気になる。現代ではなかったものだから特にだ。
「でも、色々とすごくお上手なんじゃないですか?男性を気持ちよくさせる技術、すごくたくさん持ってそうです。ん?そう考えると、私のって、全然ダメダメですね。遊女になって修行しなきゃかなぁ。遊女になったら、私の事買ってくれます?」
「遊女なんかならなくていいだろうがァ!」
思ったよりも大声で言われ、ビクッとなる。
「すみません。でも、技術はないから、実弥さんの事、満足させてあげられないなぁって思って。あ!天元さんのお嫁さんに聞いた方が早いですかね?」
遊女がダメなら、くノ一だったお嫁さん達ならどうだろう。すごく上手そうだし、遊郭に潜入できる位だ。
「何で、そんな風に考えるんだァ、お前はァ」
流石に呆れられている。だけど、私としては実弥さんに満足してもらう事が、一番大事な事なのだ。
「いやいや、そんな技術があったら、もっと実弥さんを満足させてあげられるかなぁって思うじゃないですか」
「だから、何でそう考える?そこまでして、しなくていい」
どうしても私の気持ちは伝わらないようだ。